浄化法としてのカパーラバーティ
カパーラバーティ浄化呼吸法とは?
カパーラバーティ浄化呼吸法(以下カパーラバーティ)は、「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と鼻息のする、急速で力強い吐息の連続が特徴です。心肺機能が活性され、肺活量が増えます。腹筋の瞬間的な収縮により内臓が刺激され、体内に溜まった老廃物や毒素がデトックスされます。
カパーラ(kapala)は「頭蓋骨」、バーティ(bhati)は「輝く」を意味し、カパーラバーティは頭蓋骨の中に収まっている鼻腔をキレイにし、前頭葉をクリアにする方法です。『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』によれば、カパーラバーティは6つの浄化法のひとつとされ、鼻から肺までの気道と内臓を浄化します。
カパーラバーティのやり方
カパーラバーティのやり方を簡潔に説明します。
正しい坐法を取ります。腹筋を瞬間的に引き締めて鼻から息を吐き、お腹をゆるめると自然と鼻から息が入ります。
1秒間に1〜2回の出入息を「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と力強くリズミカルに繰り返します。初心者はこの出入息を30回程度からはじめ、慣れるにしたがって回数を増やします。
これらを2〜3セットを繰り返します。
カパーラバーティに期待される効果
- 浄化効果:カパーラバーティは鼻腔や前頭葉、呼吸器系や腹部の内臓、ナーディ(気道)などの浄化を行います。
- 瞑想の準備:この呼吸法は、瞑想の準備として行われることもあります。鼻からのリズミカルな呼吸によって、脳へ十分なエネルギーを供給し、瞑想への集中力を高める効果が期待されます。
- 呼吸の向上:腹筋や横隔膜が鍛えられます。肺活量が増し、呼吸する能力が高まります。
- 覚醒効果:急速な腹式呼吸によって交感神経優位となり、全身に新鮮なエネルギーを供給し、眠気を取り除きます。朝に行うことで、覚醒効果を得ることができます。
- 内蔵の活性化:瞬発的な腹式呼吸を多数繰り返すことで、内蔵の動きが活性化します。消化力や排泄力を向上させる効果が期待されます。
- クリアな思考:脳に多くのエネルギーを供給し、クリアな思考を促進します。頭がスッキリとした状態で、集中力や問題解決能力が高まるでしょう。
以上のようにカパーラバーティは、身体と心に様々な効果が期待される呼吸法です。
力強くスピーディーな出入息をマスターしよう!
カパーラバーティでは、腹筋を瞬間的に引き締めて鼻から息を吐き、お腹をゆるめると自然と鼻から息が入る、1秒間に1〜2回の出入息を「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と力強くリズミカルに繰り返します。この独特の呼吸をマスターしましょう。
【プラクティス1】くちびるをすぼめて息のかたまりをぶつける
①おなかに意識を持っていきます。片方の手のひらをおなかに当てるといいでしょう。
②もう片方の手のひらを口から10センチほど前に持ってきます。
③くちびるをすぼめて突きだして「フッ!フッ!フッ!フッ!」と息のかたまりを手のひらにぶつけるように出息、入息を10回程度繰り返します。吐くときにおなか(腹筋)が瞬発的に収縮して動いていることを反対の手のひらで感じます。
④呼吸を整えて今度は口を閉じて鼻から「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と10回程度、出入息します。
これらを2~3セット繰り返します。出入息とともにおなかが凹んだり膨らんだりしていれば、正しくできています。
ポイント1:瞬発的に出息します
おなかに意識を持っていきます。腹筋を瞬間的に引き締めると息が出ます。出息の量ははじめは少なくてもいいです。それよりも出す瞬発力の方が大切です。慣れるにしたがって自然と息の量は増えていきます。
ポイント2:入息は忘れるくらいで
息を意識的に吸おうとしなくてオッケーです。出息のときに瞬発的に収縮したおなかが、その反動でゆるみ息が自然に入ってくるにまかせます。つまり、入息のことは忘れるくらいでいいです。出息だけに集中し、出息を最小限の力(腹筋の収縮)で行う感じです。
【プラクティス2】ドッグブレス
ポイント1,2を意識しながら実践してみましょう。
①犬の呼吸。犬が暑いときに舌を出して「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」と出息、入息をしていますね。それを真似て出入息を10回程度繰り返します(舌は出しても出さなくてもオッケーです)。
②今度は口を閉じて鼻から「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と10回程度出入息しきます。
これらを2~3セット繰り返します。
実践、カパーラバーティ!
ここではカパーラバーティの4つのプラクティスをバリエーションも含めて実践します。
【プラクティス3】両鼻で30~60回
正しい坐法を取ってから、
① 完全呼吸法の要領で息を満たし、次いで息をゆっくりと吐いていきます。
② 胸がゆるんだところで瞬発的に腹筋(下腹部)を引き締めて「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と力強くリズミカルに30~60回の出入息を行います。
③ 終わったら十分に呼吸を整えます。
これらを2~3セット繰り返します。出入息を30回程度から始め、慣れるにしたがって60回まで回数を増やしていきます。
ポイント3:腹筋を引き締めるとき、肩や胸、頭が一緒に動かないようにします。
緊張させるのは出息の際の腹筋だけで、後はリラックスして行います。
ポイント4:1回ごとの出入息の量(シュッ!の音量)を一定に保ちます。
出入息のスピード、リズムを一定に保ちましょう。
【プラクティス4】両鼻で60回、出入息の量を変化させる
ポイント4の通り、出入息の量は一定であることが望ましいのですが、ここでは意図的に変化を加えます。
正しい坐法を取ってから、
① 完全呼吸法の要領で息を満たし、次いで息をゆっくりと吐いていきます。
② 胸がゆるんだところで瞬発的に腹筋(下腹部)を引き締めて「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と60回の出入息を行います。
スタート時は小さな息の量でスタートし、そこから徐々に増やしていきます。つまり腹筋の引き締めの緊張を高めていきます。
折返しの30回の時に最大限の息の量で出入息します。「シュッ!」音も最大になります。
30回からは徐々に減らしていき、最後はスタート時と同じ小さな息の量に戻ります。
③終わったら十分に呼吸を整えます。
これらを2~3セット繰り返します。
【プラクティス5】片鼻10回を左右交互に60回
スカ・プールヴァカの要領で片鼻で実践します。
正しい坐法を取ってから、
① 右親指を使って右鼻を閉じ、ゆっくりと左鼻から息を満たし、次いで左鼻からゆっくりと息を吐いていきます。
② 胸がゆるんだところで左鼻でカパーラバーティの出入息10回を行います。
③ そのままのペースで、右中指(または薬指)を使って素早く左鼻を閉じ、右鼻で10回の出入息を行います。
④ 左右の片鼻10回ずつの出入息を交互に、合計60回実践します。
⑤ 終わったら十分に呼吸を整えます。
これらを2~3セット繰り返します。
このプラクティスでスカ・プールヴァカに期待される効果が強調されます。つまり左右の気道(イダーとピンガラ)を浄化し、自律神経を刺激します。
【プラクティス6】片鼻1回を左右交互に60回
テンポよく左右の鼻を交互に塞いでいきます。正しい坐法を取ってから、
① 右親指を使って右鼻を閉じ、ゆっくりと左鼻から息を満たし、次いで左鼻からゆっくりと息を吐いていきます。
② 胸がゆるんだところで、カパーラバーティの出入息を左鼻で1回行います。
③ そのまま、右中指(または薬指)を使って素早く左鼻を閉じ、右鼻からも1回の出入息を行います。
④ 片鼻1回ずつの出入息を左右交互に、合計60回実践します。
⑤ 終わったら十分に呼吸を整えます。
これらを2~3セット繰り返します。
カパーラバーティ実践時の注意事項
カパーラバーティは、身体や心の浄化など多くの良い効果をもたらす一方で、刺激が強いため、注意が必要な点もあります。安全な呼吸法ですが、初心者は身体の状態に注意を払いながら慎重におこなってください。
めまいや違和感が起こったら(軽いものはよくあることですので大丈夫です)、特に最初のうちはいったん中断して、少し休んでからよりおだやかなペースで再開するといいでしょう。
- 過呼吸に注意:カパーラバーティは強く早い出入息を行うため、過呼吸を引き起こす可能性があります。過呼吸とは、急に呼吸過多となり、息苦しさや動悸、めまい、頭痛、手足のしびれ、吐き気などの症状が現れる病態を指します。これらの症状が現れた場合は、カパーラバーティを止めて休息を取りましょう。
- 食後は避ける:食後は消化器官に負荷がかかるため、カパーラバーティを行うのは避けましょう。飲酒の後も同様です。
- 高血圧の人は注意:高血圧の方は、カパーラバーティを行う前に医師の指導を仰ぐことをおすすめします。急激な呼吸が血圧に影響を及ぼす可能性があります。心臓病の方も同様です。
- 妊娠中は注意:妊娠中の方は、身体の状態が変化していますので、カパーラバーティを行う前に医師と相談しましょう。無理をせず、安全な呼吸法を選択しましょう。
- 鼻詰まりの場合:強い鼻詰まりの状態でカパーラバーティを行うと、耳や神経系に負担がかかる可能性があります。そのときは鼻詰まりを解消してからにするか、実践を控えましょう。
- 回数を無理に増やさないこと:身体と相談しながら慎重に少しずつ回数を増やしていきましょう。最初のうちは余分な緊張が入りやすく、身体も不慣れです。不調を感じたらすぐに止めて、休息をとりましょう。
- 鼻水が出やすい:実践中に鼻水が出やすいです。そんなときはティッシュで遠慮なく鼻をかみます。
FAQ
「鼻が詰まっている場合は?」
もし鼻詰まりが軽度なら、カパーラバーティを行っても構いません。呼吸によって鼻が通ることもあります。ただし、鼻が強く詰まっている場合は、空気圧が耳の方にかかる恐れがあるので、カパーラバーティは控えましょう。
「やるとおなかが痛くなります」
もし病気でないのなら、おそらく走ったときにおなかが痛くなる状態と同じでしょう。カパーラバーティでは横隔膜や腹筋を瞬発的に動かすため、普段あまり使われていない筋肉に急な刺激が加わり、驚いて痛みが生じることがあります。
無理のない範囲で横隔膜や腹筋を鍛えることで、この痛みを軽減させることができます。カパーラバーティ自体も、横隔膜や腹筋を鍛える良い方法と言えます。
「お腹がチャプチャプ音が鳴ります」
カパーラバーティを行っていると、お腹がチャプチャプと音を立てることがありますが、これは胃袋に水分が入っているために起こる現象です。この音が出ることは問題ありませんので、ご安心ください。
「いつやるのがおすすめですか?」
カパーラバーティは、朝がオススメです。朝に行うことで一日の始まりをスッキリとした気持ちで迎えることができます。
また、気持ちをスッキリさせたいときや身心を活性化させたいときにも適しています。カパーラバーティは交感神経を優位にし、身体を活発にする効果があるため、夜寝る前はオススメしません。
頭の中が考え事でいっぱいだったり、気持ちを切り替えたいときにもカパーラバーティは役立ちます。瞑想の前に準備として行うことで、瞑想に入りやすくなります。
松下師恩の修行日誌から
呼吸法クイズ
問1:カパーラバーティ浄化呼吸法の特徴は何ですか?
a) 静かで穏やかな呼吸
b) 急速で力強い吐息の連続
c) 長い間息を止める
d) 息を吐くときにハミング音を奏でる
問2:カパーラバーティを行うことで起こる可能性のある症状は何ですか?
a) 過呼吸
b) 体重の増加
c) 血圧の低下
d) 胃もたれ
問3:カパーラバーティで鍛えられる筋肉は何ですか?
a) 肋間筋
b) 大殿筋
c) 大腿筋
d) 横隔膜や腹筋
答えは【まとめの章】の最後にあります。
まとめ
カパーラバーティ浄化呼吸法は、急速で力強い吐息の連続が特徴であり、ヨーガの浄化法の一つに分類されています。
この呼吸法を実践する際のポイントは、腹筋を瞬間的に引き締めることと、リズミカルな呼吸を心掛けることです。さまざまな効果が期待され、浄化、瞑想の準備、呼吸の向上、覚醒、内蔵の活性化、クリアな思考などがあげられます。
しかし、過呼吸に注意する必要があります。食後や飲酒後は行わず、妊娠中や高血圧の方は医師に相談することをおすすめします。また、回数を無理に増やさないよう留意することも大切です。
カパーラバーティは、身体と心に様々な効果が期待される呼吸法です。適切なやり方と注意点を守りながら、ぜひその魅力を体感してみてください。
【答え】問1:b) 問2:a) 問3:d)
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