ナーグ・マハーシャヤの生涯(7)驚嘆すべきエピソード集:シロアリと猟銃と火事

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父ディンヤダルの最期

ナーグの父、ディンダヤルの最期が近づいてきました。ナーグの努力によって、晩年のディンダヤルの心境の変化は目覚ましく、世俗的な執着は消え、心身ともに健やかでした。父はこの時期を祈りと瞑想で過ごしていました。

ある朝、ナーグが高齢の父を介助して歩いていると、ディンダヤルは突然、脱力したように倒れました。医師が呼ばれ、重度の脳卒中と診断されました。ナーグは父の耳元で、聖なるマントラを繰り返し、父も一緒にそれを唱えました。

医師は彼の脈をとりましたが、望みはありませんでした。ディンダヤルは、主の御名を唱えながらこの世を去りました。ナーグは、父が主の御名を唱え、意識を保ったまま亡くなったことに慰められました。

シロアリへの慈悲

「至高者はあらゆるところに遍在している」という真理を、ナーグは直観していました。彼の慈悲の心は、あらゆる生き物に及んでいました。

 

あるとき、ナーグの家に信者やってくると、シロアリが家の支柱を食い荒らしているのを発見しました。信者が柱をたたくと、シロアリたちは衝撃で地面に落ちました。

「ああ! あなたは何ということをしたのです!」とナーグが叫びました。「気の毒な生き物、彼らは長い間、ここに安らぎの住処を見出していたのです。あなたがこのように彼らを苦しめたことは、無慈悲な行為なのです」ナーグの目は、慈悲の涙に溢れていました。信者は、驚きと後悔に打ちひしがれました。 

それからナーグはシロアリに「ここで安らかに暮しなさい。この度のことで、あなた方はおびえる必要はありません」と語りかけ、シロアリたちが巣を作るのを手伝いました。

シロアリたちは再びそこに落ち着き、柱はどんどん食い尽くされていきました。ナーグは誰にも、シロアリの邪魔をすることは許しませんでした。そしてついに柱は崩壊しました。

ナーグ、ヨーロッパ人の銃を奪い取る

あるときのことです。数人のヨーロッパ人がデオボーグに狩猟を楽しみにやってきました。ナーグは彼らの元に駆け付け、このような残酷な行為を止めるように手を合わせて懇願しました。

彼らはベンガル語が理解できなかったので、彼に構わず、銃に弾を装填し始めました。ナーグは激高して叫びました。「これ以上、残酷なことをするな!」

ヨーロッパ人たちは彼を狂人かと思い、ナーグを無視して野鳥に銃を向けました。ナーグは突然、彼らに襲い掛かり、瞬く間に銃を奪いました。雄々しき獅子が貧相な彼の体に乗り移ったかのようでした。

ヨーロッパ人たちはどうしてもナーグから銃を奪い返すことができませんでした。その後、彼らはナーグを告訴しようとしました。

しかし、ナーグ・マハーシャヤの聖者としての人格と、彼の非暴力の実践を聞くに及び、彼らの中にナーグに対する大きな尊敬の念が生じました。彼らは二度と狩猟のためにデオボーグを訪れることはありませんでした。

隣りの家が火事にあった時、ナーグは

ある夏、ナーグの家の北側にある隣家から炎が上がりました。火事でした。隣家は激しく燃え、火の粉が四方八方に飛び散りました。

隣家とナーグの家との距離は15メートル程度しかなく、しかもナーグの家は藁ぶきでした。村人たちの混乱はどんどん大きくなり、みな火を消し止めることに必死でした。

しかしナーグ・マハーシャヤは、迫りくる危険には全く無頓着で、手を組み、静かに巨大な炎の前に立ちました。ナーグの妻シャラトカーミニーは差し迫った危険に恐怖して、衣服や家財道具を大急ぎで持ち出し始めました。そのとき、ナーグは叫びました。

「なんと愚かで疑り深いのでしょう。落ち着きなさい! こんな取るに足らないものを、いったいどうしようというのか。ブラフマー神は、今日まさにこの家の近くを訪れ喜ばれているというのに、礼拝を捧げる代わりに、あなたはこれらのちっぽけなことで右往左往している!」

そしてナーグは手を打ち鳴らし、忘我の喜びの中で踊り始めました。「主に栄光あれ! もし人を守護する神がいるなら、何の危険があろう。だがもし彼の機嫌を損ねたなら、その者を救う力はこの世には存在しない」

結局この火事は、隣家の全てを燃やし尽くしましたが、ナーグの家は無事でした。

ラーマクリシュナの御手を見る

ナーグ・マハーシャヤは、人生に起きるすべての出来事に、師ラーマクリシュナの優しい御手を見ていました。

あるときナーグが寝ていると、大きな猫がいきなり彼の顔に飛び乗ってきて、左目をひっかきました。彼は痛々しいほどの怪我を負いました。ナーグは言いました。

「聖ラーマクリシュナご自身が、猫を使って、わたしの前世の悪業を罰したのです。おお、これもまたまぎれもなく彼の恩寵なのです!」

その後、そのひどい怪我は、大した治療もすることなく治ってしまいました。

またあるとき、ナーグは原因不明の両手の激しい痛みに苦しみました。あまりの痛みのため、彼はずっと手を組み続けていました。その組んだ手を少しでも離そうとすると、激しい痛みに襲われるのでした。

「師は、常に合掌することを学ばせるために、わたしにこの痛みと苦しみを与えたのです」とナーグは語りました。

「バンザイ、ラーマクリシュナ!汝に栄光あれ! 骨と肉でできたこの劣悪な檻を、あなたの神聖な目的のために心から捧げることができませんでした。このような激しい痛みでわたしを罰するのはふさわしいことです」

ナーグが激しい痛みに苛まれていたとき、彼は次のように祈りました。

「わたしをこの痛みで苦しめることによって、あなたは慈悲をお示しになっておられます。なぜならば、この痛みはわたしに、あなたのことだけを思わせるからです。祝福はまさにこの痛みです」

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