【ホーリーマザー】サーラダー・デーヴィーの生涯(6)ラーマクリシュナの偉大な弟子たちとの絆

Ramakrishna world

【ギリシュのヴィジョン】

ギリシュ・チャンドラ・ゴーシュは劇作家、俳優で、後に『近代ベンガル戯曲の父』と呼ばれました。彼はもともと大酒のみで放蕩ほうとう生活を送っていました。しかしラーマクリシュナと出会ってから、彼は完全な別人になりました。 

以前の彼は徹底した無神論者でしたが、熱烈な信仰者に生まれ変わりました。ギリシュは師の存命中から、ラーマクリシュナは神の化身であると宣言してはばからない、数少ない弟子の一人でした。

1885年、ギリシュは悪性のコレラにかかり、ドクターから回復の見込みはないと判断されました。ギリシュは朦朧もうろうとした意識の中で、赤い縁の布をまとったまばゆい女性のヴィジョンを見ました。

慈愛に溢れた顔をしたその女性はギリシュのそばに座り「このプラサード(神のおさがり)を食べなさい」と言って、彼の口に入れました。

その後、ギリシュは意識を戻し、たちまち彼の体は回復し始めました。

1891年、ギリシュは師の妻サーラダーを訪ねて、ジャイラムバティにやってきました。彼女の姿を一目見た瞬間、ギリシュは感動に震え、驚きの声をあげました。「ああ! あなたはあのときの母ではありませんか!」

重病のときの鮮やかなヴィジョンを思い出したギリシュは、彼女に問いかけました。「あなたはわたしにとってどんな母なのですか?」

ホーリーマザーは答えました。「あなたの本当の母なのですよ。あなたの師の妻だとか、義母だとかいうただの母ではありません。本当の母なのです

後にギリシュは目に涙をためながら、このように言いました。「神が人としてお生まれになるということは、大変信じがたいことだ。――まるでわれわれのうちのただの一人のように。

宇宙の聖母が、質素な村の女の姿で目の前に立っているなどと夢にも思えようか?偉大なるマーヤ―(幻影)が、まるで普通の女の人のように家事などをしていると想像できようか?


それにもかかわらず、彼女は偉大なマーヤーであり、シャクティ(宇宙の根元的力)であり、宇宙の母であられるのだ。神の母性の理想を確立し、万人の解放を受け合うために化身されたのだ」

ナーグ・マハーシャヤの訪問

ナーグ・マハーシャヤはラーマクリシュナの傑出した在家の弟子でした。ヴィヴェーカーナンダが、「わたしは地球上のさまざまな国を広く旅行したが、ナーグ・マハーシャヤほどの偉大な魂に出会えたことはなかった」と言ったほどの聖者でした。このナーグ・マハーシャヤもホーリーマザーを女神の化身と見ていました。

1893年、ナーグが初めてカルカッタのマザーを訪問したときのことでした。付き人が、「マザー、このナーグ・マハーシャヤとは何者ですか? マザーにごあいさつ申しあげていますが、あまりに強く頭を床に打ち付けるので、血が出そうになっています。

僧侶がやめさせようとしていますが、彼は一言も話さず、意識を失っているかのようです。気がふれているのでしょうか?」と報告しました。

当時、ホーリーマザーが男性信者に直接会うことはありませんでしたが、ナーグの信仰に深く心を動かされたマザーは、ナーグを部屋に連れてこさせました。

僧侶に手を引かれてやってきたナーグは、その額は腫れ上がり、足取りはおぼつかず、眼は涙で溢れていました。マザーが普段の慎み深さを止めて、彼をそばに座らせました。ナーグは恍惚状態で「お母さん! お母さん!」と繰り返すだけでした。彼女は彼の涙をぬぐいました。

別のときマザーはプラサード(マザーからのおさがりの食べ物)をナーグに与えました。すると彼は、その食べ物のみならず、葉っぱのお皿まで聖なるものとして食べてしまいました。

あるときマザーは、みすぼらしい格好をしていたナーグのために、新しい布をプレゼントしました。しかしナーグはそれを身につけることなく、マザーへの敬意のしるしとして、いつも頭に巻いていたのでした。

ナーグ・マハーシャヤが亡くなった後、ホーリーマザーはこう言いました。

数知れぬ信者がここに来ました。でも彼のような人はいません

ブラフマーナンダのサマーディ

ブラフマーナンダは師の霊性の息子で、ラーマクリシュナ・ミッションのプレジデントでした。彼は毎朝ホーリーマザーの住まいを訪ねて、家の者に彼女の健康状態について尋ねるのでした。

ちらりとマザーを見ただけでも、霊的な感情に圧倒されてしまうために、ブラフマーナンダは二階にいるマザーには直接会わずに帰っていました。

ベルル僧院でのラーマクリシュナの生誕祭にホーリーマザーが招かれました。マザーが見つめ弟子たちが歌い朗誦していると、ブラフマーナンダは歓喜の余りサマーディに入ってしまいました。

外界に対して完全に無意識となり、その顔は神々しい光に輝きました。彼は自室に運ばれました。いつまで経ってもサマーディから戻らないので、弟子たちは心配し始めました。

しかしマザーは極めてうれしそうにブラフマーナンダの境地を見ていました。「彼のことは心配いりませんよ」と言いました。

それからブラフマーナンダのそばに行き、そっと愛情深い声で「ラカール、おさがりのご馳走を持ってきましたよ。お上がりなさい。わたしの子供」と言葉をかけました。

ブラフマーナンダはたちまち通常意識に戻り、マザーに気づくと、彼女の足下にひれ伏しました。

あるとき、ホーリーマザーはブラフマーナンダたちとともに、ブッダの聖地サールナートを訪ねました。その帰り道、ブラフマーナンダは、乗っている馬車を交換してほしいと、彼女に頼み込みました。ブラフマーナンダの強い願いを彼女は承諾しました。

するとブラフマーナンダが乗った馬車が事故にあってしまいました。彼は無傷でした。これに関してマザーは説明しました。

「わたしがこの小さな事故にあう運命だったのです。それをラカールが、いわば力づくで自分の肩に背負ってくれたのです。わたしの方の馬車には子供たちも乗っていました。ラカールがいなければ、子供たちはどうなってしまったでしょうか」

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