【零の呼吸・表】誤解を解消! 胸式呼吸の真実とその実践方法

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はじめに:胸式呼吸は悪い呼吸?

現代人は「浅く早い呼吸」になっていると言われています。それには様々な原因が考えられますが、一番に挙げられるのは過度のストレスでしょう。氾濫する情報、目まぐるしく変化する社会、複雑化する人間関係、忙しすぎる仕事など、ストレスの要因になるものが増えているのです。

このブログでヨーガ呼吸法を取り上げる理由のひとつに、「息苦しさ(生き苦しさ)」から私たちを解放し、心地よく豊かな呼吸を作り上げることにあります。簡単に述べると「浅く早い呼吸」から「深くゆったりした呼吸」への転換です。

そこでまず最適と思われるのが腹式呼吸です。おなかを風船のように膨らませたり、凹ませたりする呼吸です。

腹式呼吸は、ストレスにより交感神経優位に偏りがちな自律神経を整えてくれます。その他にもメリットは計り知れず、現代人の抱える問題のほとんどが解決されるのではと思うくらいです。

腹式呼吸の素晴らしさが広まる一方で、胸式呼吸の方は誤解されがちです。なぜなら現代人の「浅く早い呼吸」は、主に胸式で行われているからでしょう。それゆえに「胸式呼吸=悪い呼吸」と思う方が多いのです。

先に結論からお伝えすると、腹式と同じように胸式呼吸は重要です。この記事では2つの呼吸を比較し、胸式呼吸の具体的な実践方法をご説明していきます。

腹式呼吸vs胸式呼吸

他力の肺、鳥かごの胸郭

呼吸の中心的な臓器であるは、胃腸や心臓などとは異なり、自力で動くことができません。筋肉でできていないのですね。肺は呼吸筋によって他力で動いているのです。

肺は胸郭きょうかくの中にあります。胸郭は骨で形作られた鳥かごのような形をしています。背中側に背骨として連なる12個の胸椎きょうついから始まって、12対の肋骨ろっこつ(あばら骨)がぐるっと左右から弓なりに半周回って胸側の1個の胸骨きょうこつ(ネクタイのような形の骨)に付着しています。

胸郭の役割は2つあります。一つは超重要な臓器である肺と心臓を守るよろいの役割。もう一つは呼吸です。

腹式呼吸のメカニズム

呼吸は大きく二つに分かれます。腹式呼吸と胸式呼吸です。鳥かご(胸郭)の底面に位置する横隔膜おうかくまくという筋肉が上下運動することによって、腹式呼吸がなされます。

吸気では横隔膜が下に下がり胸郭を下方向に拡げます。そのとき、腹部の内臓が横隔膜に押し下げられお腹が膨らみます。呼気時には、腹筋が収縮してお腹を凹ませ、内臓と横隔膜を押し上げて、肺の下半分を圧縮させて息が出ます。

横隔膜というと、その名前から薄い膜のようなものを想像しがちですが、胸とお腹の間にある、ドーム状の形をした筋肉で、平均で3~5mmの厚さです。焼肉でいうサガリやハラミにあたる部分です。

胸式呼吸のメカニズム

一方で、鳥かご(胸郭)の側面、12対の肋骨の隙間を埋めている肋間筋ろっかんきんが、胸郭を広げたり狭めたりして呼吸するのが胸式呼吸です。肉の部位でいうと肋間筋はスペアリブです。この肋間筋が胸式の主役筋になります。

吸気時には外肋間筋と複数の呼吸補助筋が協力しあって、胸郭を前上方に引き上げ左右に開き、息を入れます。呼気時には内肋間筋や腹筋が胸郭を縮めて、息を出します。

胸式呼吸の3つのメリット

1:胸式呼吸によって、運動時や日常の活動時に、とにかくすばやく酸素を取り込むことができます。横隔膜を大きく動かす腹式呼吸と異なり、一度に吸える量はやや少なくなりますが、その反面、息をすばやく吸えます。

2:胸式呼吸では交感神経が優位になり、体をアクティブに動かしたり、やる気スイッチをONにすることができます。 胸式呼吸は、いわば、攻めの呼吸と言えるでしょう。

3:胸式呼吸は姿勢改善にも寄与します。胸を全方位に広げることで、胸郭周りが発達して、美しいプロポーションを作ることができます。

胸式呼吸と腹式呼吸はどちらが良いということではなく、それぞれ効果に違いがあるので上手に使い分けることが大切です。

例えば、朝起きてから胸式呼吸をすることにより、やる気が出て活気が上がり、夜眠る前に腹式呼吸をすることによりリラックスして、質の良い睡眠が得られるといった具合です。

腹式呼吸vs胸式呼吸のまとめ

これまでの内容を以下の表に簡潔にまとめました。

 腹式呼吸胸式呼吸
特色おなかを動かす呼吸 胸を動かす呼吸 
主役筋横隔膜肋間筋
自律神経 副交感神経が優位交感神経が優位
主な効果リラックスモードアクティブモード  

実践! 胸式呼吸

さあ、これから胸式呼吸の実践に入っていきましょう!

胸式呼吸のやり方

まずは胸式呼吸の手順をご説明します。正しい坐法を取ってから、


①息を吐きます。最後におなかを引き締めて、息を吐き切ります。


②おなかは引き締めたまま、胸に息を入れていきます。このとき、胸郭が全方位に大きく広がるのが目標です。


これらを3分から10分程度繰り返します。

それではこの胸式呼吸をマスターするために、以下の3つのプラクティスを順番に実践してみましょう。

プラクティス1:おなかの引き締めを意識

胸式呼吸では息を吸うときに、おなかが膨らまないようにすることが重要です。おなかの引き締めを意識し続けましょう。

正しい姿勢をとって、両手をおなかに当てながら

①息を吐きます。最後におなかを引き締めて、息を吐き切ります。

②おなかは引き締めたまま、胸に息を入れていきます。このとき、おなかが膨らまないように両手で軽くおなかを押さえています。

これらを3分から10分繰り返します。

プラクティス2:肋骨下部を左右に広げます

胸式呼吸では胸郭が全方位に大きく広がります。両手を当てて感じていきましょう。まずは左右方向への広がりから。

正しい姿勢をとって、両手を肋骨の左右に当てながら

①息を吐きます。最後におなかを引き締めて、息を吐き切ります。


②胸に息を入れていきます。このとき、両手で肋骨が左右に広がるのを観察します。

これらを3分から10分繰り返します。

プラクティス3:胸骨を斜め上方に持ち上げます

次に前方と上方への広がりを感じます。

正しい姿勢をとって、両手を胸骨に当てながら

①息を吐きます。最後におなかを引き締めて、息を吐き切ります。


②胸に息を入れていきます。このとき、胸骨(胸の前面中央の骨)が斜め上方に持ち上がるのを両手で観察します。

これらを3分から10分繰り返します。

ステップ1~3を練習することで、胸式呼吸をマスターすることができます。おなかを動かさずに胸郭を全方位に広げることができれば、もう手を外していただいて大丈夫です。

よくあるご質問(FAQ)

「息を入れても、胸郭がほとんど広がりません」

ストレスなどによって呼吸筋、特に肋間筋が緊張して固まってしまっているかもしれません。このようなときはアーサナ(ヨーガポーズ)がオススメです。

呼吸筋を①ほぐし、②ストレッチし、③鍛えるのです。これがうまくハマれば、驚くほど胸郭が広がり息が入ってきます。

具体的な実践方法については別の機会にご紹介させていただきますが、アーサナをぜひ日々の実践に取り入れてみてください。

「男性は腹式呼吸、女性は胸式呼吸が多いと言われるのはなぜですか?」

あくまで一般的な傾向ですが、腹筋群が発達している男性は腹式呼吸を行いやすいと言われています。一方、女性は腹筋群が弱く、また、締め付ける衣服が多いことが胸式呼吸が多い傾向にあります。

また、妊娠時には胎児の成長により横隔膜が圧迫され、腹式呼吸が難しくなります。ただし、これらはあくまでも一般論であり、個人差があります。

呼吸法クイズ

問1:腹式呼吸と胸式呼吸の主な違いは何ですか?
a) 腹式呼吸は横隔膜が動き、胸式呼吸は肋間筋が動く
b) 腹式呼吸は肋骨を左右に広げ、胸式呼吸は胸骨を斜め上方に動かす
c) 腹式呼吸は交感神経が優位、胸式呼吸は副交感神経が優位

問2:胸式呼吸では、身体のどの部分が膨らむのが目標ですか?
a) 腹部
b) 肩
c) 胸部

答えはまとめの章の末尾にあります。

まとめ:現代人の呼吸を数値化してみると

現代人の呼吸を便宜的に、わかりやすく10段階で数値化してみます。最上が「深くゆったりとした呼吸」で10ポイント、下が「浅く早い呼吸」で0ポイントとして、点数をつけると「腹式呼吸1ポイント、胸式呼吸3ポイントくらいになるかもしれまでん。

腹式呼吸はほとんど使われていないので1ポイントとしました。ですから、弱点を克服する上でも、リラックスをもたらす腹式呼吸が大切だと言われるわけです。しかし、だからといって胸式呼吸が悪いわけではありません。

ダメなのは「浅く早い」3ポイント程度の胸式呼吸であって、より「深くゆったりとした」胸式呼吸は、むしろ目指すべきです。

つまり、理想的な呼吸は「腹式呼吸10:胸式呼吸10」であり、これに近づくことが目標です。これからご紹介するヨーガ呼吸法とその技法をマスターしていくことで、確実に近づいていくでしょう。

【五の呼吸法】ウジャイ・プラーナーヤーマは胸式呼吸の上位版と言えます。また、【壱の呼吸法】ヨーガの完全呼吸法は腹式呼吸と胸式呼吸を組み合わせた方法です。ぜひこれらに挑戦して、呼吸を深化させてください。

胸式呼吸と腹式呼吸は、体の状態やニーズに応じて使い分けることが大切です。正しい呼吸法を学んで、日常生活に取り入れることで、健康的な呼吸習慣を身につけましょう。

このブログを通じて呼吸法について学び、実践してみてください。それによって、心身の健康が向上し、人生が上質なものへ変化することでしょう。

【答え】問1:a) 問2:c)

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