はじめに:完全呼吸法とは?
【壱の呼吸法】完全呼吸法は、ヨーガにおいて最も理想的な呼吸法であり、腹式呼吸と胸式呼吸を連結させて行います。
一般の方の普段の呼吸は1回につき0,5リットルほどで、肺の一部しか使われないため、全身に十分な酸素を供給できずにいます。しかし、完全呼吸法では肺の全領域を使って呼吸するため、通常の呼吸よりもさらに2〜3リットル多くの空気を吸い込むことができるのです。
完全呼吸法のやり方
完全呼吸法の手順を簡単にご説明します。正しい坐法を取ってから、
①ゆっくりと息を吐きます。最後におなかを引き締めて、息を完全に吐き切ります。
②お腹を膨らませながら息を吸います(腹式呼吸)。
③さらに胸を膨らませながら息を吸います(胸式呼吸)。
これらを繰り返します。
今回は、この完全呼吸法について理解しマスターしたい方のために、実践を踏まえながらわかりやすくシンプルに解説いたします。
「肺」を知ると、完全呼吸法が理解できる
「肺」は胸郭に左右の二つに分かれて存在し、成人で約3〜6リットルの容量を持ちます。肋骨と胸骨と胸椎に守られています。
肺には3億から6億個の肺胞があり、そこで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。その表面積は広く、合計するとテニスコート反面分もあるのだとか。突然ですが、ここでクエスチョンです。
Q:心臓にあって肺にないものは何でしょうか?
心臓は筋肉でできており、自力でポンプのように動くことで全身に血液を供給しています。
一方で肺は筋肉でできておりません。肺は他力で膨らんだり縮んだりしているのです。ですから答えは
A:筋肉です。
ここが重要です。肺は円錐形をしています。その底辺は「横隔膜」に、側面は「肋間筋」に覆われています。主役の横隔膜や肋間筋、そしていくつかの補助的な筋肉の働きによって、肺は息の出し入れができるのです。
腹式呼吸はおなかの動きに連動して「横隔膜」を活用するのです。
そして胸式呼吸は「肋間筋」を活用して胸郭を動かすのです。
実践! 完全呼吸法
☑胸式呼吸の主役筋は肋間筋、上部の肺を活用します。
☑腹式呼吸の主役筋は横隔膜、下部の肺を活用します。
この二つの呼吸が合わさり、肺をフル活用するのが完全呼吸法です。
完全呼吸法に期待される効果
完全呼吸法には以下のような効果が期待されています。
- 呼吸筋の力が向上し、呼吸力が増します。
- 酸素と生命エネルギーであるプラーナを効率的に取り入れることができます。
- 腹式呼吸と胸式呼吸の両方の効果を得ることができます。
- 就寝時に行うと寝つきが良くなり、スッキリ目覚める効果があります。
- リラックス効果、リフレッシュ効果が得られます。
- 自律神経が整います。
【プラクティス1】さあ、完全呼吸をやってみよう!
完全呼吸法の良き練習として、腹式での吸気と胸式の吸気との間に中断を設けます。これは二つの吸気のメリハリをつけるためです。具体的な手順は以下の通りです。あお向けになるか、正しい坐法を取ってから、
①ゆっくりと息を吐きます。ある程度吐いたら、おなかを引き締めて息を完全に吐き出します。
②おなかをゆるめ、腹部を膨らませながら息を入れます(腹式呼吸)。
③3秒間息を止めます(中断)。
④さらに胸に息を入れます。肋骨を左右に開き、胸骨を斜め前方に持ち上げながら、息をたっぷり満たしていきます(胸式呼吸)。
これらを3分から10分程度繰り返します。
実際には肺の下部から上部へと肺の全ての領域に息が満たされていきます。はじめのうちはあお向けの姿勢で練習すると、腹式と胸式のメリハリをより感じやすいでしょう。
ポイント1
腹式呼吸と同様に「しっかりと息を吐く」ことが重要です。十分に吐くことによって、後続の吸気が深く行えます。
【プラクティス2】腹式の吸気と胸式の吸気を連続して行う
いよいよ本番です。今度は中断なしで行います。腹式と胸式のメリハリをつけつつ、滑らかに連結させます。正しい坐法を取ってから、
①ゆっくりと息を吐きます。最後におなかを引き締めて息を完全に吐き出します。
②おなかをゆるめ、腹部を膨らませながら息を入れます(腹式呼吸)。
③そのまま胸に息を満たしていきます。肋骨を左右に開き、胸骨を斜め前方に持ち上げます(胸式呼吸)。
これらを3分から10分程度繰り返します。
ポイント2
腹式と胸式の吸気をスムーズにつなげることが大切です。もし連結が難しく感じる場合は、それぞれの呼吸法に慣れてから再度チャレンジすると良いでしょう。
呼吸法クイズ
問1:胸式呼吸の主力筋の名称は?
問2:完全呼吸法は二つの呼吸を組み合わせることで、肺の全領域を使って深い呼吸を行うことができます。その二つの呼吸とは何か?
※答えはまとめの章の最後にあります。
完全呼吸法のまとめ
完全呼吸法は、ヨーガの最も理想的な呼吸法であり、腹式呼吸と胸式呼吸を組み合わせることで肺の全領域を使って深い呼吸を行います。
この呼吸法には多くの効果が期待されており、呼吸力の向上や、酸素と生命エネルギーの効率的な取り込み、さらには腹式呼吸と胸式呼吸の両方の効果を得ることができます。
完全呼吸法を行う際には、「しっかりと息を吐くこと」と、「腹式呼吸と胸式呼吸をスムーズにつなげること」が重要です。これらのポイントに留意しながら、日常生活の中で気軽に実践してみましょう。
完全呼吸法は、心身の健康に効果的な方法です。自分に合ったタイミングで取り入れて、リラックスやバランスの整った生活を送るために役立ててください。
【答え】問1:肋間筋 問2:腹式呼吸と胸式呼吸
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