【五の技法】ヨーガの新たな次元へ! ジャーランダラ・バンダで内なる変容を起こす

pranayama

 ジャーランダラ・バンダ(Jalandhara Bandha)とは

 【五の技法】ジャーランダラ・バンダは、ハタ・ヨーガにおける重要なテクニックです。『ジャーランダラ』はサンスクリット語で「のどの鎖」を意味し、『バンダ』は「締める」という意味です。

このバンダは主に呼吸法やムドラー(ヨーガの技法の一つ)で使用されます。のどを引き締めることによって、プラーナ(生命エネルギー)をコントロールし、体内のナーディ―(気道)を浄化し、エネルギーで満たす効果があります。

古典的なヨーガのテキストである『ハタ・ヨーガ・プラディピカー』には、ジャーランダラ・バンダについて次のように書かれています。

のどを引き締めて、心臓の部位にしっかりとアゴをつける。これがジャーランダラ・バンダと呼ばれるバンダであり、老いと死をなくす

のどを締めることによって二つの気の流れ(イダーとピンガラー)をしっかり止めるべき

イダーとピンガラー【参の呼吸法】スカ・プールヴァカで解説しました。プラーナ(生命エネルギー)が流れる左右の気道の名称でしたね。

また『シヴァ・サンヒター』には、

このジャーランダラ・バンダは、シッダ尊者たちにシッディ(成就)をもたらしたのである。シッディを求めるヨーギーは、毎日欠かさずこのバンダの修習を行うのである

と記されております。シッダとは成就者の意味です。古くからジャーランダラ・バンダが重要視されていることが理解できるかと思います。

ジャーランダラ・バンダのやり方

ジャーランダラ・バンダのやり方は非常にシンプルです。「アゴをのど元のくぼみにしっかりと圧しつけ、のどを引き締める」というものです。それでは、ここからはさらに詳しく、具体的な実践を通じて説明していきます。

プラクティス1:完全呼吸法でのジャーランダラ・バンダ

正しい坐法を取ってから、

 ①ゆっくりと息を吐きます。最後にお腹を引き締めて、息を完全に吐ききります。

 ②お腹を膨らませながら息を吸います(腹式呼吸)。

 ③さらに胸を膨らませながら息を吸います(胸式呼吸)。

 ④息を十分に満たしたところでその息を止めて(クンバカ)、アゴを軽く前方に弧を描きながらゆっくり下ろしていき、のど元のくぼみにしっかりと押し当てます

 ④この状態をキープします。うなじを十分に伸ばし、胸の上部を斜め前方に持ち上げ続け、ジャーランダラ・バンダができるだけ緩まないようにします。

 ⑤十分にバンダを保持した後に、アゴをゆっくりと外し、息を吐きながら元に戻ります。

これらを3分から10分程度繰り返します。息を止める時間は少しずつ延ばしていきます。最初は4秒程度から始め、徐々に長くしていきましょう。

ポイント1

アゴを下すのと同時に胸を斜め上方に持ち上げます。アゴと胸が近づき、ドッキングする形になります。ここでの「のど元のくぼみ」とは、両鎖骨中央の胸骨の上のくぼみのことです。 

ポイント2

アゴをしっかりとのど元のくぼみに押し当てるためには、首と脊椎の柔軟性が必要です。首の柔軟性を高めるためには、後述するアーサナの練習をおすすめします。

ポイント3

歯を噛みしめたり、口周辺を緊張させたりするなどの、余計な力みを入れないようにします。

これはNG!

ジャーランダラ・バンダをかけているときに、背中が丸まっているのはNGです。単に首をうなだれるのではありません。胸を張るようにしながら斜め上に持ち上げると上手くいくでしょう。

プラクティス2:3つのバンダをかける

ジャーランダラ・バンダの要領がつかめたら、3つのバンダを同時にかけてみましょう。3つのバンダとはジャーランダラ・バンダムーラ・バンダウッディーヤーナ・バンダでしたね。

正しい坐法を取ってから、

①ゆっくりと息を満たしていきます。

②息を止めて(クンバカ)、あごを引き(ジャーランダラ・バンダ)、肛門を締め上げ(ムーラ・バンダ)、おなかを引き上げ(ウッディーヤーナ・バンダ)ます。

③無理のない程度に息を止めたら、3つのバンダを解いて、ゆっくりと息を吐きます。

これらを1サイクルとして3分~10分程度繰り返します。

3つのバンダの働きについて簡単におさらいしましょう。

  • ムーラ・バンダ:肛門を締めることによってプラーナが下に漏れないようにふたをして、エネルギーを上昇させます。
  • ウッディーヤーナ・バンダ:お腹を引き上げることによって内臓の位置を調整し、エネルギーの上昇を促進します。
  • ジャーランダラ・バンダ:アゴを引くことによってのどを締め、プラーナが上に漏れないように蓋をして、エネルギーを充填じゅうてんします。

ジャーランダラ・バンダ実践における注意事項

1.アゴを無理にのど元のくぼみに押し当てようとしないこと。首や脊椎の柔軟性が不十分な場合は、アゴが引ける範囲に限定して行います。

2.首に障害がある場合はこのバンダを避けるか、専門家に相談することをオススメします。

ジャーランダラ・バンダの役割と期待される効果

1.プラーナのコントロール

ジャーランダラ・バンダで、のどや上部の孔(鼻孔、口)から息だけでなく、プラーナも漏らさないようにします。

また、三つのバンダを同時にかける時、下のムーラ・バンダやウッディーヤナ・バンダによって上昇したエネルギーが抜けていかないように、ジャーランダラ・バンダで上から蓋をします。

その結果、体内でエネルギーが圧縮され、ナーディ―が浄化され、細胞一つ一つにプラーナが充満していきます。

ジャーランダラ・バンダと反対の「アゴをつき出す」態度は、一般的にも無気力さや傲慢さを表わしているとされ、特にスポーツや武道では好ましくない姿勢とされています。

2.自己制御の力が強化され、内分泌腺が活性化する

ジャーランダラ・バンダは心身に多くの影響を与えます。自己制御の力が強化され、ストレスや不安などの感情のコントロールがしやすくなります。

さらに、首の内分泌腺(甲状腺、副甲状腺)が刺激され、活性化します。これにより、代謝や免疫機能が改善され、体調が整いやすくなります。

松下師恩の体験談

私が初めてジャーランダラ・バンダを試みた際、経典に記載されていた「アゴを胸に押しつける」という行為が、どれだけ頑張っても胸に届かなかったことを覚えています。

後に、正しい位置は両鎖骨の間の胸骨の上のくぼみであること、そしてアゴだけを動かすのではなく、胸を持ち上げるようにして両者を結び付けることが正しいやり方であることを知りました。

しかし、私は十分に力を入れてアゴを押し当てることができず、わずかな隙間が埋まりませんでした。その時に私は自分の首や脊椎の柔軟性が不足していることに気づきました。

そこで、後述するアーサナを実践することで、ジャーランダラ・バンダができるようになりました。

ジャーランダラ・バンダができるためのアーサナ

ジャーランダラ・バンダを行う際には、首や脊椎の柔軟性が非常に重要です。これらの柔軟性を高めるためには、ハラ・アーサナ(鋤のポーズ)サルヴァーンガ・アーサナ(肩立ちのポーズ)が効果的です。

ハラ・アーサナ(鋤のポーズ)

①仰向けに寝て両足をそろえ、手のひらを下に向けて腕を両脇に伸ばします。

②ゆっくりと息を吸いながら、腹筋を使って両足を90度まで持ち上げます。

③次に息を吐きながら、両足を頭越しに持っていきます。可能なら足先を床につけると良いでしょう。

④この時、アゴがのどのくぼみにしっかりと圧しつけられるようにします(ジャーランダラ・バンダ)。

⑤自然な呼吸を保ちながら、このポーズをキープします。

⑥息を吐きながら、脊椎を順番に床に戻していきます。おしりが床についたら、足もゆっくりと下ろします。

サルヴァーンガ・アーサナ(肩立ちのポーズ)

①仰向けに寝て両足をそろえ、手のひらを下に向けて腕を両脇に伸ばします。

②ゆっくりと息を吸いながら、腹筋を使って両足を90度まで持ち上げます。

③次に息を吐きながら、腰を床から浮かし、手を腰に添えて肩から足先までが真っすぐになるように伸ばします。

④この時、アゴがのどのくぼみにしっかりと圧しつけられるようにします(ジャーランダラ・バンダ)。

⑤自然な呼吸を保ちながら、このポーズを30秒から5分間キープします。

⑥最後にハラーサナのポーズに戻り、息を吐きながら脊椎を順番に床に戻していきます。おしりが床についたら、足もゆっくりと下ろします。

以上のアーサナを練習することで、ジャーランダラ・バンダを行うために必要な柔軟性を高めることができます。ただし、首に強いコリや障害がある場合はこれらのアーサナを避けるか、専門家に相談してください。

呼吸法クイズ

問1.ジャーランダラ・バンダの実践において、アゴをのど元のくぼみに押し当てる際のポイントは何ですか?
a) アゴを下げるのと同時に胸を持ち上げること
b) アゴをできるだけ強く押し当てること
c) アゴを一度に3回押し当てること
d) アゴを前方に突き出すこと

問2.ジャーランダラ・バンダに必要な、首と頚椎の柔軟性を高めるアーサナ(ポーズ)は?
a) シャヴァ・アーサナ
b) ロータス・ポーズ
c) ハラ・アーサナ
d)トリコーナ・アーサナ

問3.ジャーランダラ・バンダは、一般的に何の姿勢を表わすとされていますか?
a) 平和と喜び
b) 無気力と傲慢さ
c) 活気と興奮
d) 自己制御と感情のコントロール

*答えは【まとめの章】最後にあります。

ジャーランダラ・バンダのまとめ

ジャーランダラ・バンダは、ハタ・ヨーガ必須のテクニックであり、呼吸法やムドラーと組み合わせて行われます。のどを引き締めることでプラーナをコントロールし、ナーディ―を浄化し、体内にプラーナを充満させる効果があります。

正しいやり方はアゴをのど元のくぼみに圧しつけ、のどを引き締めることです。ただし、首や脊椎の柔軟性が必要なため、ハラ・アーサナやサルヴァーンガ・アーサナなどの練習を通じて柔軟性を高めることが重要です。

ジャーランダラ・バンダの実践には注意が必要であり、経験豊富な指導者の指導を受けることをオススメします。

ジャーランダラ・バンダの効果としては、プラーナのコントロール、内分泌腺の活性化、自己制御力の強化などがあります。このテクニックを継続的に行うことで、心身のバランスを整え、健康と幸福を促進する効果が期待されます。

以上がジャーランダラ・バンダについての解説となります。ヨーガの実践を通じて、内なる成就を追求していきましょう。

【答え】問1.a) 問2.c) 問3.d)

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