ウッディーヤーナバンダ(UDDIYANA・BANDA)とは?
【参の技法】ムーラ・バンダに続き、今回は【四の技法】ウッディーヤーナ・バンダについて解説します。
ウッディーヤーナとはインドの言葉で「引き上げる」「天翔ける」の意味を持っています。
そしてバンダとは「締め付ける」「ロックする」「縛る」という意味を持っています。ヨーガにおいてはプラーナ(生命エネルギー)をコントロールするテクニックでしたね。
ウッディーヤーナ・バンダとは、腹部を引き締め、内臓と横隔膜を引き上げ、プラーナを上昇させる技法です。呼吸法では主にクンバカ(止める息)の際に用いられます。
これからウッディーヤーナ・バンダについて、やり方、練習方法、効果、注意点などを詳しく解説します。
【七つの技法】は以下のとおりです。
『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』におけるウッディーヤーナ・バンダ
ヨーガの経典『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』では、ウッディーヤーナ・バンダについて次のように記載しています。
おおどり(プラーナ)が疲れを知らず大空にかけり上がることが、すなわちウッディーヤーナである
へその下から上に至るまで、腹部をひっこめる。このウッディーヤーナ・バンダは死神である象を追い払うライオンのようなものである
まことに、ウッディーヤーナ・バンダはあらゆるバンダの中で最上である。ウッディーヤーナ・バンダをしっかりと行うことで、解脱はおのずから来る
このように、ハタ・ヨーガの初期から、ウッディーヤーナ・バンダが重要視されていることがわかります。
実際に、ヨーガ呼吸法においてバンダは必須です。また、アーサナに取り入れることでも、その効果は高まります。
ウッディーヤーナ・バンダは、プラーナの引き上げというメインの目的ばかりでなく、内臓の活性化やウエストの引き締め、姿勢の改善など美容と健康の面からも注目されています。
ウッディーヤーナ・バンダの三大効果
ウッディーヤーナ・バンダによって、以下の3つの効果が期待されます。
プラーナのコントロールと上昇
ウッディーヤーナ・バンダによって腹部を引き締めることで、プラーナの漏れを防ぎ、上昇させることができます。
これによって生命エネルギーが上昇し、身体を軽快にし、心を前向きにするなどの効果があります。
内臓へのマッサージ効果
ウッディーヤーナ・バンダによって、消化器系や呼吸器系、循環器系が改善されます。
腹部を引き締めることによって、内臓をマッサージし、消化器官の働きを促進し、便秘や消化不良を改善する効果があります。
また、肺活量が向上し、下腹部から上半身にかけての血液やリンパの流れが促進されます。
腹筋の強化と体幹の安定
ウッディーヤーナ・バンダによって、腹部の筋肉が強化されます。これによって、おなかが引き締まり、体幹が安定し、姿勢の改善や腰痛の予防に役立ちます。
ウッディーヤーナ・バンダのやり方
まずは、ウッディーヤーナ・バンダのやり方を簡単にご説明しましょう。
①息を完全に吐き切って、肺を空っぽにします。
②腹部をひきしめ、続いて内臓と横隔膜を上に引き上げます。
③ある程度キープしたら、おなかをゆるめ息を入れていきます。
今度は、より詳しく解説します。
①【スタートの姿勢】坐位でも立位でも可能です。はじめは立位がやりやすいです。立って、足を肩幅より広めに開き、膝を少し曲げます。手のひらで膝を押し、背筋を伸ばします。結果、上体はやや前傾姿勢になります。
②【息を吐き切る】3回深呼吸をしてから、(鼻か口、やりやすい方から)息を全部吐き出します。そのまま息を止め、腹部を背骨方向に引っ込めます。
③【内臓の引き上げ】内臓は腹筋と背骨に圧迫されている状態です。さらに、内臓を上方に引き上げ、横隔膜も連動して上に引き上げます。熟達するとお腹はベコっと凹んで、大きな空洞ができます。
④【リラックス】ある程度息を止めたら、バンダの緊張をゆるめて、鼻からゆっくりと息を吸います。上体を起こして、呼吸を整え、全身をリラックスさせます。
これらを3回程度、繰り返します。
特に③が難しいです。「お腹が全然動かない!」と感じる方もいるでしょう。はい、はじめはみんなそこからスタートですので、ご安心くださいね。
まずは1cmだけでもいいので内臓の引き上げを試みましょう。練習を継続していくと、内臓や横隔膜が次第に動くようになり、だんだんとお腹が凹むようになります。
最後には、大きな穴が開いたようにお腹がペコっと凹みます。痩せている人は、下部のあばら骨が浮き出てきます。このあとにあげるプラクティスを継続していただけたら、どなたでもできるようになります。
以上がウッディーヤーナ・バンダのやり方です。
ウッディーヤーナ・バンダ:実践のポイント
① 最初は空腹時が良いでしょう。また、排泄の後の方がやりやすいです。熟達している場合は、いつでも行うことができます。
② 腹部の引き締めは、腹式呼吸で吐く息の際の、お腹の動きをより強調したものです。肺の空気を完全に絞り出します。
③ 初めはお腹が凹まないかもしれません。内臓や横隔膜を引き上げる感覚をつかむのが難しく感じるでしょう。
最初は引き上げを意識するだけでも十分です。そして、少しでも引き上げられるようになったら、日々の練習で段々と大きくできるようになります。
④ 呼吸を止めている時間は、最初は5秒から始め、20~30秒を目安にすると良いでしょう。熟達してきたら、1分、2分と時間を伸ばしていきます。
⑤ 慣れてきたら、ムーラ・バンダ、ジャーランダラ・バンダと組み合わせることで、効果が倍増します。
ウッディーヤーナ・バンダをマスターするための三つのプラクティス
ウッディーヤーナ・バンダを練習する際には、以下の3つのメニューを組み合わせると効果的です。
おなかのマッサージ
目的:手の指を使っておなかをマッサージし、おなかを動かしやすくします。
①ウッディーヤーナ・バンダの要領で息を吐き切り、腹部を引き締め、内臓や横隔膜を引き上げます。
②息を止めたまま、両手の指を集めて腹部を指圧しながら、へそを中心に時計回りにぐるぐると円を描くようにマッサージします。
③ある程度息を止め続けたら、マッサージを終えて、腹部の緊張をゆるめ、鼻からゆっくりと息を入れます。呼吸を整えながらリラックスします。
アグニサーラ・クリア
目的:おなかを激しく前後させることにより、アグニ(火元素)を燃え上がらせ、不純なものを焼き切るハタ・ヨーガの浄化法です。
①ウッディーヤナ・バンダの要領で息を吐き切り、腹部を引き締め、内臓や横隔膜を引き上げます。
②息を止めたまま、ペコペコペコペコとおなかを前後に出したり凹ませたりを早いペースで繰り返します(最初は20回前後を目安に)。
③ある程度息が限界まで来たら、おなかの出し入れを終えて、鼻からゆっくりと息を入れます。呼吸を整えながらリラックスします。
これらを3回繰り返します。
ダイナミック・ウッディーヤーナ・バンダ
ウッディーヤーナ・バンダは通常、内臓や横隔膜を引き上げた状態でキープしますが、ここでは引き上げて下ろし、引き上げて下ろしを数回繰り返します。
①ウッディーヤナ・バンダの要領で息を吐き切り、腹部を引き締め、内臓や横隔膜を引き上げる。
②息は止めたままで、内臓と横隔膜を引き上げたら、腹筋をゆるめて下ろし、再び引き上げてからゆるめて下す。これを数回繰り返す。内臓が縦回転している。
③息が限界まで来たら、おなかの動きを終えて、鼻からゆっくり息を入れる。呼吸を整えながらリラックスする。
これらを3回程度繰り返す。
プラクティスの頻度とゴール
アグニサーラ・クリアは数をこなすことを意識します。量を重視です。
一方でダイナミック・ウッディーヤーナ・バンダでは一回一回しっかりとバンダを決めてからゆるめて下します。質を重視です。
最後に第三章で紹介したウッディーヤーナ・バンダの実践を3回程度行い締めくくります。
これらのプラクティスを週2、3回、可能であれば毎日1回行います。時間が取れる方は集中的に朝昼晩と一日3回行ってもいいです。
個人差はありますが三カ月から半年で十分に効果を感じられるようになるでしょう。とにかく継続的な練習が重要です。
正面から背骨を手でつかめるのではないか、というくらいおなかが凹むことが一つのゴールです。
ウッディーヤーナ・バンダの注意点
①背中を丸めず、背筋を伸ばしておくこと。つまり猫背にならないこと。プラーナが上昇しやすくなります。
②バンダが成立していても、おなかまわりに脂肪がたくさんついている人は、おなかがくっきりと凹んで見えにくいです。
③初めのうちは息を止め続けるのは、無理なくできる範囲で大丈夫です。練習中に違和感や痛みを感じた場合は一旦中止しましょう。
④循環器や内臓に疾患のある方や妊婦の方は、ドクターと相談してから実践してください。
裏技! おなかを簡単に凹ませる方法
「おなかが全然凹まない」という声が聞こえてきそうです。ここでとっておきの方法を一つご紹介します。それは水中でウッディーヤーナ・バンダを実践することです。
「何を突拍子もない事を!?」とお思いになるかもしれません。「水中」と書くとびっくりしたかもしれませんが、まあ、お風呂とかプールなどがやりやすいでしょう。おなかが水中でしたら、顔は出していて構いません。
そこでウッディーヤーナを実践します。するとおなかが簡単にベコッと凹みます!? このからくりはいうと、水圧によるもので、肺から息を吐ききった状態ですので水圧でおなかは非常に凹みやすくなっているのです。ぜひお試しあれ。
呼吸法クイズ
問1:「ウッディーヤーナ・バンダ」を行う主な目的は何ですか?
a) 体の柔軟性を向上させる
b) プラーナ(生命エネルギー)をコントロールし、引き上げる
c) 心をリラックスさせる
d) 筋力を向上させる
問2:「ウッディーヤーナ・バンダ」の主な利点は何ですか?
a) 筋肉を大きくする
b) 消化と臓器の機能を改善する
c) 睡眠の質を上げる
d) 柔軟性を高める
問3:「ウッディーヤーナ・バンダ」を実践する際、どの部分を引き締め、引き上げることが必要ですか?
a) 背中
b) 骨盤底筋
c) 腹部と横隔膜
d) 首
※答えはまとめの章の最後にあります。
まとめ
本記事では、【四の技法】ウッディーヤーナ・バンダについて詳しく解説しました。ウッディーヤーナ・バンダは、内臓の活性化や姿勢の改善、プラーナの上昇といった数々の効果が期待されます。
また、ウッディーヤーナ・バンダはアーサナや呼吸法、ムドラーに取り入れることで、より総合的な効果をもたらします。
しかしながら、ウッディーヤーナ・バンダは一朝一夕ではできず、練習をつみかさねることが必要です。初心者の方は、経験豊富な指導者の指導を受けることをおすすめします。
自分自身のヨーガの旅において、ウッディーヤーナ・バンダをぜひ最大限に活用してみてください。
【答え】問1:b) 問2:b) 問3:c)
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