【七の呼吸法】バストリカー実践法。呼吸法のエッセンス、ここに凝縮!

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バストリカーとは?

初心者から中級者の方にぜひマスターしてほしいヨーガの七つの呼吸法、いよいよ最後になります。【七の呼吸法】バストリカー・プラーナーヤーマ(以下、バストリカー)はパワフルな呼吸法です。そしてこれまでの呼吸法で修得したエッセンスが詰まっています。

バストリカー(Bhastrika)」とは、鍛冶屋で用いる送風器「ふいご」のことです。ピストン式で風を送り出し、鉄を加工する火を高温に燃え上がらせます。

古くは革袋を利用した革ふいごでした。ヨーガではおなかを革袋と見立て、ふいごのように動かして、息を鼻から強く速いテンポで出していきます。

また、おなかを波打つように動かすことによって、おなかの消化の火、肉体の火元素、熱エネルギーを強烈に燃え上がらせます。プラーナを体内に送り込み生命エネルギーに満ちた状態にします。

格闘好きの方なら柔術家ヒクソン・グレイシーが、火の呼吸法としてバストリカーに取り組んでいたことをご存じかもしれません。

この呼吸法はかなり強烈なものですから、初心者は【壱の呼吸法】から【六の呼吸法】まで十分に取り組んでから、もしくは指導者のもとで実践することをオススメします。

カパーラバーティ浄化呼吸法との違いとは?

バストリカーによく似た呼吸法に、【六の呼吸法】カパーラバーティがあります。 なかにはバストリカーとカパーラバーティは同じであるという説明をしているところもあります。また、ヨーガの流派や団体によってもこれら呼吸法の説明が異なっており、判然としません。

しかし、これは仕方のないことなのです。ヨーガは伝統的に師から弟子に受け継がれてきたものです。弟子の素養に合わせて師は教えをなします。師もそのまた師から教えを受けているのです。つまりヨーガは個別的なものであり、ある程度の体系はあっても、細部まで統一された技法はないのです。

もし、これを読まれているあなたが、あるヨーガの団体やあるヨーガ指導者に師事しているのであれば、そこでの教えを尊重してそのまま実践すればいいかと思います。他の教えは否定せず、しかし放っておく姿勢がいいのです。

しかしもしあなたがそういった団体や指導者についていなければ、ヨーガには様々な教えがあることを理解し、まずは実践してみて、そのエッセンスを汲み取るようにする、という姿勢がいいかと思います。

話がやや膨らんでしまいました。もとに戻すと、カパーラバーティは浄化法であり、一方のバストリカーはプラーナーヤーマ(調気法)であるという違いはあります。

当ブログではカパーラバティは出入息を延々と(熟達者は千回程度まで)繰り返していく浄化法であり、バストリカーは20回~25回の出入息にクンバカ(止息)を挟んで繰り返す呼吸法であるとして、解説していきます。

バストリカーの出入息、その3つの方法

バストリカーの出入息については、およそ以下の3つのやり方が説かれているかと思います。どれが正しいかではなく、いずれも有益なやり方です。これから詳しく説明します。

1.カパーラバーティと同じやり方で

一番目はカパーラバーティと同じやり方です。

腹筋を瞬間的に引き締めて鼻から息を吐き、お腹をゆるめると自然と鼻から息が入ります。1秒間に1〜2回の出入息を「シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!」と力強くリズミカルに繰り返します。

息は吸おうとしなくてオッケーです。出息のときに瞬発的に収縮したおなかが、その反動でゆるみ息が自然に入ってくるにまかせます。

つまり、入息のことは忘れているくらいでいいです。出息だけに集中し、出息を最小限の力(腹筋の収縮)で行う感じです。

2.入息も出息と同じ強さで

二番目のやり方では入息も意識的に行います。

出息と同じ強さと速さで入息します。よりパワフルになります。カパーラバーティでこの出入息をやると過呼吸のリスクが高まりますが、バストリカーでは20回~25回の出入息でクンバカ(止息)を挟むので安全に実践できます。

3.ウジャイのようにのどを半分閉めて

三番目のやり方はウジャイのように実施します。

ウジャイでは吐く息の際に、ジャーランダラ・バンダを半分かけて独特の摩擦音を立てていきます。それと同様にバストリカーでものどを半分閉めた状態で出入息を行います

このときの入息はカパーラバーティと同じ1番目のやり方でも、出息と入息が同じ強さの2番目のやり方でも構いません。「シュッ!」音が強調され、まさにふいごのような音に聞こえるでしょう。

以上、バストリカーの出入息のやり方を3つ説明しました。後になるほど難易度や強度があがります。その時々のフィーリングで選んでオッケーです。

バストリカーに期待される効果

バストリカーはこれまで学んだヨーガ呼吸法のエッセンスが詰まっています。それだけに期待される効果は幅広く多数にわたります。ここではバストリカーに突出したものをあげてみます。

身体を温めます。

7つの呼吸法の中でもっとも効果的です。おなかの消化の火、肉体の火元素、熱エネルギーを強烈に燃え上がらせます。

全身がエネルギッシュになります。

全身の細胞に生命エネルギーが充填され、活性化します。

クンダリニーを覚醒させます。

ヨーガの伝統では、クンダリニーと呼ばれる潜在的エネルギーが基底のムーラダーラ・チャクラに眠っているとされます。バストリカーによるパワフルな呼吸法はクンダリニーの目覚めを促します。

内臓をマッサージします。

瞬発的な腹式呼吸を多数繰り返すことで、内臓がダイナミックにマッサージされます。消化力や排泄力が向上します。

呼吸筋が鍛えられます。

腹筋や横隔膜への強い刺激により、呼吸力が向上します。

実践!バストリカー

さあ、実践に入りましょう。これまで学んだ呼吸法やバンダの技法が組み合わされ、取り組みがいのある内容になっています。

【プラクティス1】クンバカの際にバンダをかける

バストリカーの出入息20回~25回の後にクンバカ(止息)を挟みます。これを繰り返していきます。クンバカの際にはバンダをかけます。

正しい坐法を取ってから、

①両鼻で、バストリカーの出入息を20回〜25回行ないます。

②最後にしっかり息を吐いてから、ゆっくりと息を吸います。

③息を十分に満たしたところでその息を止めて(クンバカ)、アゴを下ろしていき、のど元のくぼみにしっかりと押し当てます(ジャーランダラ・バンダ)。うなじを伸ばし、胸の上部を斜め前方に持ち上げ、のどの締め付けができるだけ緩まないようにします。

④十分に息を保った後に、アゴを外し、息をゆっくり吐いていきます。

⑤胸がゆるんだところで、再び①の出入息を20回〜25回行います。

これらを3分〜10分程度繰り返します。

慣れてくれば、クンバカ中にジャーランダラ・バンダの他に、ムーラ・バンダも行います。可能であればさらにウッディーヤーナ・バンダもつけ加えます。

【プラクティス2】1:4:2の呼吸法で

1:4:2の呼吸法でバストリカーを実践します。吐く息の最後にバストリカーの出入息を行います。

以下のステップを参考に快適にできる長さをチョイスします。

  • ステップ①:1:1:2(4秒:4秒:8秒)
  • ステップ②:1:2:2(4秒:8秒:8秒)
  • ステップ③:1:3:2(4秒:12秒:8秒)
  • ステップ④:1:4:2(4秒:16秒:8秒)
  • ステップ⑤:1:4:2(5秒:20秒:10秒)
  • ステップ⑥:1:4:2(6秒:24秒:12秒)

ここではステップ④の4秒:16秒:8秒で表記します。正しい坐法を取ってから、

①4秒で息を吸います。

②バンダをかけて16秒間、クンバカをします。

③8秒かけて息をゆっくり吐いていきます。

両鼻で、バストリカーの出入息を20~25回行ないます。最後に息をしっかり吐きます。

これらを3分~10分程度繰り返します。バストリカーの出入息を行なうため、酸素と二酸化炭素の交換が促進され、通常よりも楽に呼吸ができるかと思います。

【プラクティス3】半分のジャーランダラ・バンダと3つのバンダ

実践の深まりによって、難易度が上がってきました。ここではウジャイ・プラーナーヤーマと同じように、のどに半分のバンダをかけた状態でバストリカー3番めの出入息を行います。より激しいまさに「ふいご」のような音がします。

正しい坐法を取ってから、

①ゆっくりと十分に息を入れます。

3つのバンダをかけてクンバカをします。アゴをのど元に押し当てを引き締め、肛門とおなかを引き締め、横隔膜を引き上げます。肺に空気がいっぱいに入っているので、横隔膜を引き上げてもお腹はあまり凹まないが、下から肺を圧迫するようにします。そして喉も引き締めているので、肺には強い圧力が加わります。3つのバンダを入れたままで、しばらく息を止めます。

③おなか、肛門の締め付けをゆるめ、少しあごを浮かせくぼみから離します。半分バンダがかかった状態で息を吐きます。のどが半分開いた状態ですので「スー」という摩擦音が発生します。

④胸がゆるんだところで、半分のどのバンダをかけたままバストリカーの出入息を20~25回繰り返します。最後にしっかり息を吐きます。

これらを繰り返します。慣れてきたらこのプラクティスを1:4:2の呼吸法で実践しましょう。

【プラクティス4】スカ・プールヴァカの要領で

片鼻でバストリカーの出入息を行います。

正しい坐法を取ってから、

左鼻でバストリカーの出入息を20~25回繰り返します。

②左鼻から息を入れます。

③3つのバンダをかけてクンバカします。

④右鼻からゆっくり息を吐いていきます。

右鼻でバストリカーの出入息を20~25回繰り返します。

⑥右鼻から息を吸います。

⑦3つのバンダをかけてクンバカします。

⑧左鼻からゆっくり息を吐いていきます。

これらを3分から10分程度繰り返します。

スカ・プールヴァカの片鼻交換の呼吸法に、バストリカーの瞬発的な出入息が加わっています。そしてクンバカの際には3つのバンダを同時にかけてプラーナを充填させます。さらに熟達してきたら1:4:2の呼吸法ウジャイを加えてみましょう。これでひとまずの完成と言えます。

バストリカー実践における注意事項

バストリカーの実践においては、以下の注意事項に留意することが重要です。

  • 体調に合わせる: 体調が優れないときや体の不調を感じる場合は、無理をせず休んでください。特に高血圧や心臓疾患などの持病がある方、妊婦は、医師に相談した上で実践してください。
  • 食後は控える: バストリカーは強力な呼吸法ですので、食事直後や胃が満腹の状態で行うと不快感や吐き気が生じる可能性があります。空腹時に実践するか、軽食の後に時間をおいてから行うようにしてください。飲酒後も同様です。
  • 無理な力を入れない: バストリカーは力強い呼吸を行うものですが、余計な力みを入れてしまうと呼吸器官や筋肉に負担がかかる可能性があります。リラックスを心がけて行うようにしましょう。
  • 呼吸のリズムに注意: バストリカーは1秒間に1~2回の出入息で行います。正確なリズムと一定した呼吸の量を保つことに集中します。
  • 初心者は段階的に: バストリカーは初中級レベルの呼吸法であり、初心者は段階的に取り組むことをオススメします。まず【壱の呼吸法】から【六の呼吸法】までを実践してから始めてみましょう。可能であれば専門家の指導を受けることをオススメします。

これらの注意事項を守りながら、バストリカーを実践することでより安全かつ効果的な結果を得ることができます。

松下師恩の修行日誌から

呼吸法クイズ

問1:バストリカーの名前の由来は何ですか?
a) バストリカーは革袋から派生した
b) バストリカーは鍛冶屋のふいごに由来する
c) バストリカーは古代のヨーガの神話に基づいている
d) バストリカーの名前の由来は不明

問2:バストリカーの実践において、期待される効果は何ですか?
a) 身体を冷やす
b) リラクゼーション効果
c) クンダリニーを抑える
d) 全身をエネルギッシュにする

問3:バストリカーとカパーラバーティの主な違いは何ですか?
a) カパーラバーティは浄化法で、バストリカーはプラーナーヤーマ
b) カパーラバーティは入息と出息を同じくらい強く行う
c) カパーラバーティは間にクンバカを入れる
d) バストリカーはカパーラバーティよりも簡単

答えは【まとめの章】の最後にあります。

まとめ

【七の呼吸法】バストリカーはエネルギッシュな呼吸法で、熱エネルギーを刺激して、身体を温めて、全身を活性化します。ヨーガの呼吸法のエッセンスが凝縮したバストリカーの効果は素晴らしいものがあります。

最後を締めくくる7番目の呼吸法ということもあって、これまでの呼吸法やバンダの技法を駆使する実践になります。それだけに難易度は上がりますが、チャレンジする価値は十分にあります。

ただし、実践には注意が必要です。体調に合わせ、無理をせず行いましょう。初心者は【壱の呼吸法】から段階的に取り組みましょう。専門家の指導を受けることもオススメします。

ぜひバストリカーのパワフルな効果を体感してください。

【答え】問1:b) 問2:d) 問3:a)

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