【最強の健康法はコレだ!】呼吸法ウォーキングの秘訣

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はじめに: 呼吸法ウォーキングとは

『七つのヨーガ呼吸法』は初心者から中級者の方におすすめしている、主に坐法での実践です。しかし発展的に呼吸法は、寝ながらでも、立ってでも、日常生活の中でも実践できるものです。今回は歩きながら行うヨーガ呼吸法(以下、呼吸法ウォーキング)をご紹介します。

これは散歩やウォーキング、または通勤や通学など歩行時に実施できます。運動がニガテな方でも取り組めるものです。

私も月の半分は早朝に外に飛び出し、呼吸法ウォーキングを実施しています。四季折々の自然を眺め、鳥のさえずりや虫の声に耳を傾け、樹木の匂いを感じながら。そうです、呼吸法ウォーキングは心地よく楽しいです。

ヨーガ呼吸法とウォーキング、これら2つの素晴らしいメソッドが組み合わさった瞬間、私たちの体と心は驚くべき変化を遂げます。この記事では呼吸法ウォーキングの具体的な方法について、詳しく解説していきます。


狩猟採集民もブッダも歩き倒してきた

人類のスタートはおよそ600万年前と言われています。農耕や牧畜が始まる1万年前まで、人類は狩猟採集民として生活し、毎日獲物を追ったり、食用の植物を探したりと、600万年もの間、歩き続けてきたのです。

そして、現代に残る狩猟採集民においても、裸足で1日に6キロから16キロを歩いているそうです。人間の身体は、歩くためにデザインされていると言っても過言ではありません。

2500年前、ゴータマ・シッダールタは6年間の激しい苦行の後、ブッダガヤーの菩提樹の下で悟りを得られ、完全なブッダとなりました。その後、ブッダは初めに五人の苦行仲間たちに教えを説こうと考え、ブッダガヤーからサールナート(ヴァラナシ郊外)までおよそ240キロもの距離を普通に歩いたのです。

その後もブッダは45年にわたり、ガンジス河中流域を中心に裸足で歩きまわりながら教えを説き続けました。ブッダは弟子たちに、1日3回の歩く修行(経行きんひん)を指示し、自身も実践していました。


現代人になぜ呼吸法ウォーキングが必要なのか?

現代では、便利な乗り物が普及し、多くの人々がデスクワークに従事し、デジタルデバイスを使用することにより、圧倒的に歩く量が少なくなりました。現代人の運動不足は、心臓疾患、糖尿病、肥満、ストレスなどの生活習慣病を引き起こす原因となっています。

科学的研究によれば、ウォーキングはこれらの健康問題のリスクを軽減し、心身全体の健康をサポートします。

老いは足腰の衰えから始まる」と言われています。これは介護現場にいる私も痛感していることです。

足腰には筋肉のおよそ70%が集まっています。歩くことによって効率的に筋力がつくことはもちろんのこと、「第二の心臓」と言われるふくらはぎの筋肉がポンプの役割をはたして、全身に血流を巡らせます。

こうして、筋力と柔軟性の向上、心臓や血管系の健康、代謝アップにより長寿の要因となり、はたまた、脳のパフォーマンス向上やストレスの軽減、幸福感の増加など、頭やメンタルにも効くことが確認されています。

ウォーキングに、これまた素晴らしすぎるメソッドヨーガ呼吸法と組み合わせると、最高の健康法となるのは容易に想像できるかと思います。


呼吸法ウォーキングの正しいフォーム

呼吸法ウォーキングは正しいフォームを取ることで、安全に効率よく実践できます。以下は正しいフォームのチェック項目です。

1.姿勢: 頭頂部が天から引っ張られているように、背筋はすらりと伸び上がるようにします。肩は下がっていて、胸は開いています。

2.腕の振り: 肩、肘、手首はリラックスして腕を自然に前後に振ります。

3.足のステップ: 膝股関節、膝、足首もリラックスして、ゆったりとした歩幅で美しく歩きます。足は軽やかに地面に着地させます。

4.バンダ: バンダを使うことで、エネルギーを効率的に循環、上昇させ、体幹に安定性をもたらします。具体的には、ジャーランダラ・バンダのど)、ウッディーヤナ・バンダおなか)、ムーラ・バンダ骨盤底筋)の三つを軽く引き締めます。

私たちは加齢や運動不足などの理由から、背骨が固くなり、背中が丸くなり、脚はガニ股、足腰の関節が固くなるなど、アンバランスな姿勢で歩きがちです。さらに肩周りや胸周りの筋肉がこわばり、横隔膜が弱ってくると、呼吸も浅くなってしまいます。

極端な歪みやこわばりを解消するためには、アーサナ(ヨーガポーズ)の実践をおすすめします。コリや歪みをなくし、ストレッチ効果で可動域が広がり、その分ゆったりと大きく歩くことができます。


呼吸法ウォーキングをやってみよう!

実際に歩く際は、これまで解説した呼吸法ウォーキングのフォームのことは一旦置いておいて、歩数に呼吸を合わせることに集中します。歩数に呼吸を合わせることで、ウォーキングがリズミカルになります。

【弐の呼吸法】1:4:2の呼吸法を活用します

【弐の呼吸法】は、吸う息、クンバカ(止める息)、吐く息の割合を一定に保つ方法です。4秒で吸うなら、16秒止めて、8秒で吐く、これを繰り返します。

詳しくは【弐の呼吸法】の記事をご覧になってください。ここでは秒数で呼吸を数えましたが、呼吸法ウォーキングの際は歩数で数えます。例えば次のように、

1歩(右足)→2歩(左足)で息を吸い、→3歩(右足)→4歩(左足)で息を吐く。

これを続けて同様に2歩分で入息して、2歩分で出息します。こうして歩くと、入息と出息の長さの割合は1:1になります。第一歩目は右でも左でもどちらからでも構いません。

ステップ①1:1からはじめましょう

【弐の呼吸法】は坐法を組んで実践しましたが、呼吸法ウォーキングでは歩きながらの実践になります。その分負荷がかかってきます。ですから最初はやさしく入息と出息の割合を1:1からスタートしましょう。

上記の例のように、まずは2歩で吸って2歩で吐きます。これを数分続けて、余裕があるならステップアップしていきます。

・3歩で吸って、3歩で吐きます。
・または、4歩で吸って、4歩で吐きます。

これらが安定してできるようになったら、次に進んでみましょう。

ステップ②吐く息を長くして、第一の黄金比【1:2の呼吸法】へ

続いて、吸う息よりも吐く息を長くしていきます。第一の黄金比【1:2の呼吸法】を目指します。もちろん快適にできる範囲で行います。

・4歩で吸って、6歩で吐きます。
・可能ならば4歩で吸って、8歩で吐きます。

いまの自分にあった長さを見つけて実践しましょう。長すぎず短すぎない歩数で。安定してできるようになったら、次に進みましょう。

ステップ③クンバカ(止める息)を入れます

これまででもすでに十分効果が期待されますが、余裕があればクンバカを入れてみましょう。

・4歩で吸って、2歩止めて、8歩で吐きます。
・可能ならば4歩で吸って、4歩止めて、8歩で吐きます。

理想は第二の黄金比【1:4:2の呼吸法】です。つまり、4歩で吸って、16歩止めて、8歩で吐くというもの。これはかなりキツめです。中上級者向けになります。

あくまでも快適にできる割合をチョイスすることの方が大切です。自分にとって快適に数分程度続けられる割合で行いましょう。

呼吸法ウォーキングの5つポイント

ポイント1:安全な環境  安全にできる環境で行います。歩行中には転倒や交通事故などのリスクが伴います。特に初めは比較的平坦で舗装された道で実践しましょう。交通量の多いコースや悪路、悪天候は避けましょう。

ポイント2:鼻から吸う  息は鼻から吸います。鼻から吸気することで空気を浄化し加湿加温し、呼吸器系の健康をサポートします。吐くときは口でも鼻でもやりやすい方を選びましょう。【口すぼめ呼吸】も選択肢の一つです。

ポイント3:呼吸の割合の選択  その時々に最適な呼吸の割合を選択します。呼吸の長さを調整できる能力を身につけましょう。

部屋の中で坐法を組んで実践する呼吸法よりも、歩きながらの呼吸法は外的要因にかなり左右されます。それだけ難易度が高いと言えます。歩くコースによっても割合や歩数に変化をつけます。例えば、

・平坦な道では4歩で吸い、2歩止めて、8歩で吐く。
・途中階段を登るときは2歩で吸い、2歩で吐く。
・登り坂に至ると4歩で吸い、4歩で吐く。

といった具合に。コースに合わせて柔軟に変化、対応するのです。

また、歩くスピードによっても変わります。スローペースだとたくさんの歩数でひと呼吸することができます。これは歩く瞑想(マインドフルネス)や哲学的な思索に向いています。

ハイペースだと短い歩数での呼吸になるでしょう。エクササイズの要素が強まります。また早足だと呼吸を合わせることで精一杯となり、ナチュラルに雑念から離れられるメリットもあります。ともあれ無理はせず、自分のペースで実践してください。

ポイント4: 雑念への対処 はじめの頃はウォーキング中に雑念に心奪われて、いつの間にか呼吸法を忘れることが多々あります。例えば、朝食の献立のことを考えたり、昨日の出来事を反芻していたりとか。

まず第一に雑念が出てもそれにはとらわれず、呼吸と歩数に意識を置き続けるように集中します。

第二に、もし意識が呼吸から逸れてしまっても、アレコレ考えずに速やかに意識を呼吸に戻します。これらの訓練を繰り返すことによって、あなたの意志力と瞑想力が鍛えられます。

ポイント5:腹式呼吸、完全呼吸法 慣れてきた方へのオススメのバリエーションとして、腹式呼吸で実践します。腹式呼吸は、腹部を膨らませて吸気を取り込み、腹部を縮めて吐き出すことで、肺の下部にある肺胞への酸素供給が増えます。これにより、体内の酸素交換が効率的に行われ、エネルギーの生成が促進されます。

続いて完全呼吸法で実践します。完全呼吸は腹式と胸式を組み合わせた呼吸法で、肺の全領域を使用します。体内のガス交換がさらに効率的になります。


呼吸法ウォーキングで倍増する3つの効果

ヨーガ呼吸法とウォーキングの組み合わせは、その双方の効果を得られるということで、凄まじいものがあります。さらに掛け合わせることで倍増するメリットについて3つあげてみます。

1.呼吸力の強化: 呼吸法ウォーキングは身体にある程度の負荷がかかります。その結果、心肺機能が鍛えられ呼吸力が向上します。

2.瞑想力を高める: ポイント4の【雑念への対処】でも触れたように、呼吸法ウォーキングは瞑想力を高め、意思力を向上させます。歩きながら(負荷をかけながら)呼吸に集中できるようになった暁には、坐法を組んだときに負荷から解放されて、深い瞑想に入りやすくなるでしょう。

3.ナーディの浄化とプラーナの充足: 呼吸法ウォーキングによりプラーナ(生命エネルギー)が血流と連動して体内をめぐり、そして充足され上昇します。詰まりやすい特質を持つナーディ(エネルギーライン)が浄化され、心身が軽やかになり、活力が湧いてきます。


まとめ:さあ、イスから立ち上がり、歩き出しましょう!

呼吸法ウォーキングは、現代社会において健康とリラックスを融合させた最強の健康法の一つです。運動不足やストレスが悩みの種となる方々にとって、日常生活に取り入れやすく、運動がニガテな方にもオススメです。

ウォーキングはヨーガ呼吸法を組み合わせることで、その効果を最大限に高めることができます。身体と心の調和を取り戻し、健康的な生活を送る一環として、ぜひ取り組んでみてください。自然と調和する中で、新たな健康と幸福を見つけることができるでしょう。

呼吸法ウォーキングは、体と心のバランスを整え、健康な生活をサポートする素晴らしい方法です。ぜひ試してみて、その効果を実感してください。健康的な生活を送るための新たな道を開くことでしょう。


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