【壱の技法】ヨーガ呼吸法の習得に必読!正しい座り方の秘訣とは?

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ヨーガ呼吸法と座り方の関係

ヨーガ呼吸法を学ぶにあたってマスターしたい7つの技法があります。今回は【壱の技法】正しい座り方です。

ヨーガ修行において、呼吸法と座り方(坐法)は密接に結びついています。正しい座り方は、ヨーガにおいて重要な役割を果たし、呼吸法や瞑想への道を拓きます。

正しい座り方は、骨盤の立て方や背骨の伸びなどを意識することによって、内臓の働きや生命エネルギーの流れを促します。これにより、呼吸法の効果を最大限に引き出すことができます。

一方、悪い座り方や不適切な姿勢は、呼吸法の妨げとなるばかりか、身体への負担や緊張を引き起こします。例えば、猫背の姿勢や巻き肩によって、呼吸が制限され、背骨や内臓に過度の負担がかかります。その結果、呼吸法の効果や瞑想の深さが制限されます。

これからヨーガ呼吸法を学んでいくにあたって、まずは正しい座り方が取れるようにこれから学習していきましょう。

正しい座り方の効果 7選

なぜ正しい座り方が必要なのでしょうか? さらに深堀りします。ここでは特に注目される7つの効果について見ていきましょう。

  1. 姿勢の改善: 正しい座り方によって、身体のバランスが整い、猫背や反り腰などの姿勢の悪さを改善することができます。
  2. 内臓の活性化: 正しい座り方によって、内臓が正しい位置に置かれ、内臓の正常な機能を促進します。
  3. 呼吸の深まり: 正しい座り方によって、呼吸が制限されず、自然で深い呼吸ができるようになります。これによって体内の酸素供給が向上します。
  4. 集中力の向上: 正しい座り方によって、身体が安定し、心も集中しやすくなります。集中力の向上は、ヨーガの瞑想や内観の実践において重要な要素です。
  5. ストレス軽減: 正しい座り方によって、身体の緊張が解放され、ストレスの軽減に効果があります。また、深い呼吸を通じてリラックス状態に入ることができます。
  6. 内観と意識の深化: 正しい座り方によって、身体と心のバランスが整い、内観や意識の深化を促進します。坐りながら自己観察や内省に集中することができます。
  7. エネルギーの活性化: 正しい座り方によって、プラーナ(生命エネルギー)の流れがスムーズになり、体内のエネルギーが活性化します。これによって身体や心の活力が高まります。

素晴らしいですね。これらの効果を体験するためにも、正しい座り方をぜひマスターしていただきたいと思います。

まず、悪い座り方について考えます

猫背と巻き肩

悪い座り姿勢をイメージしたとき、まず、気になるのが猫背でしょう。背中が丸まり、頭が前に出て、肩が内側に巻き込まれる巻き肩の状態です。

長時間続く猫背や巻き肩によって、胸腔が圧迫されて肺の膨らみを妨げます。そのため、酸素の摂取量が減少し、疲労感や疲れやすさ、気分の落ち込みなど、さまざまな不調を引き起こします。

【実験1】猫背の姿勢で呼吸してみましょう 

①猫背の姿勢になります。腰は後ろに倒し、背中を丸め、肩や首を前に出します。多少極端な姿勢で結構です。

②この姿勢で「吸って」「吐いて」を数呼吸繰り返します。そのときの息の出入りや身体や心を観察します。

反り腰

さらに、別の隠れた悪い座り姿勢があります。それは反り腰です。一見美しい姿勢にも見えますが、腰に緊張が続いており、長時間続けると腰痛の原因になってしまいます。

【実験2】反り腰の姿勢で呼吸してみましょう

①反り腰の姿勢になります。お尻を突き出し、背中は反らせ、おなかは前に出します。これも極端な姿勢を取ります。

②この姿勢で「吸って」「吐いて」を数呼吸繰り返します。そのときの息の出入りや身体や心を観察します。

いかがでしたか?呼吸がやり辛かったかと思います。正しい坐法に移る前に、悪い座り方を実際に体験することで、その影響を感じることができます。猫背や反り腰などの悪い姿勢は呼吸を制限し、身体に負担をかけることが分かりますね。

正しい座り方のポイント1:身体の土台である「骨盤を立てる」こと

まず注目すべきは骨盤です

悪い座り方を改善するには、まず「骨盤を立てる」ことが重要です。なぜなら、骨盤は上体の土台となる部分であり、上体のバランスを保つ役割を果たしているからです。

もし土台となる骨盤が不安定な状態であれば、上体や背骨に不均等な力がかかり、筋肉の疲労や脊椎への負担が増えてしまいます。ですから、立っている時も座っている時も、まずは「骨盤を立てる」ことが、バランスの取れた身体を作るためのファースト・ステップになるのです。

これは避けたい! 骨盤の後傾

私たちに特に多い姿勢が「骨盤の後傾」です。文字通り骨盤が後ろに傾いている、後ろに倒れている状態です。土台である骨盤が後傾することにより、猫背になり、バランスを取るために顔が前に出て、巻き肩になってしまいます。呼吸が制限され、お腹の中で内臓が圧迫されます。これは避けたいですね。

これも避けたい! 骨盤の前傾

また過度な「骨盤の前傾」も良くありません 骨盤が前に倒れ、お尻が吊り上がった状態です。頭の位置は変わりませんが、過度な前傾は反り腰になってしまい、腰痛の原因となります。

正しい座り方のポイント2:骨盤を立てるために「坐骨立ち」をすること

ポイント②坐骨を意識して「坐骨立ち」をします

正しく「骨盤を立てる」状態は、「骨盤の後傾」と「骨盤の前傾」の絶妙な中間点にあります。と言われてもわかりませんよね。そこでさらなるポイントをお伝えします。

正しく骨盤を立てるには、坐骨を意識することです。坐骨を座面にしっかりと当てて「坐骨立ち」することが二つ目のポイントになります。これができると自然に正しく「骨盤を立てる」状態になります。

まず坐骨の尖った部分を探してみましょう。そこからほんの少しだけ骨盤を前に倒します。正しいのは坐骨の尖がりの数センチ前です。そこが座面に押し当たると、骨盤が自然と立ち上がります。

この時、背筋は猫背でもなく、反り腰でもなく、緊張もなく、骨盤の上に脊椎が積み上がり、すらりと美しく立ち上がる姿勢となります。正しく「骨盤を立てる」には、坐骨を意識し、坐骨を座面にしっかりと当てて「坐骨立ち」をすることがポイントなのです。

そもそも坐骨ってどこ?

坐骨ざこつは、骨盤にある骨で左右にあります。骨盤は、左右のハート型をした寛骨かんこつ、腰の少し下の平らな骨である仙骨せんこつ、そしてお尻のしっぽの骨である尾骨びこつから構成されています。

左右にある寛骨は、さらに腸骨ちょうこつ恥骨ちこつ坐骨の3つに分けられます。そのうちの坐骨が、骨盤を立てる際に意識したい非常に重要な骨となります。

では実際に、自分の坐骨を触ってみましょう! 座った姿勢を取り、右のお尻の下に、右手の平を上にして差し入れます。お尻を残後左右に揺らします。

そのときゴリゴリと手に触れる尖がりが坐骨です。左も同様にやってみます。

座面が柔らかいと感じにくいですので、堅めのものに変えて行います。

さあ、「坐骨立ち」をやってみましょう!

【プラクティス1】前後に揺れる

①イスに座ります(慣れている方は床でも構いません)。椅子の座面は適度な硬さがあり、床と水平で、太ももがほぼ水平になる高さが理想的です。背もたれに頼らず、両足はしっかりと床につけ、肩幅くらいの幅に開きます。

②右側のお尻の下に、手の平を上にして差し入れます。手に触れるのは坐骨でしたね。

③手でお尻の肉を外側にかきわけて、坐骨を座面にしっかりと当てます。

④左側も同じように行います。

⑤腰に手を当て、骨盤をゆっくりと前後に傾けてみましょう。

⑥左右の坐骨が座面にゴリゴリと当たる感触を感じます。

⑦骨盤を前後に揺らしながら、骨盤が立ち上がる最適なポイントを探し出し、感じてみましょう。

最も坐骨が感じられる尖がりからほんの少しだけ骨盤を前に倒します。そこが最適ポイントです。この最適ポイントで止まります。骨盤が立っていて、そこからさらに背筋がすらりと伸び上がることができます!

骨盤の左右のバランスを整えましょう!

骨盤の前後の傾きを修正したら、次に左右のバランスを整えます。つまり、左右の坐骨で均等に座面を押すことができるかが重要です。

もし片方の坐骨に重心がかかっていると、骨盤の高さに左右の差が生じ、骨盤の歪みが生じてしまいます。土台が歪むと、その上に立つ脊椎も傾いてしまいます。

【プラクティス2】左右に揺れる

①腿に手を置き、上体をゆっくりと大きく左右に揺らしてみましょう。

②左右にある坐骨が座面にゴリゴリと当たる感触を感じていきます。

③徐々に揺れ幅を小さくしていき、身体の中央、つまり左右の坐骨に体重が均等にかかる位置に上体を収めていきます。

骨盤左右のアンバランスは、脚を組んで座る癖がある、横座りの癖があることなどで生じやすいです。日常生活から改善しましょう。

坐骨立ち」の感覚を覚えてしまうと、姿勢が崩れた時にも自分で正しい位置に戻しやすくなります。骨盤の状態を正しく修正できる能力を身につけていきます。

「骨盤を立てる」と「坐骨立ち」の次に意識したいこと

1.背筋をすらりと伸ばす

坐骨立ち」ができ、「骨盤をたてる」ができて腰から下の土台を安定させたら、次に背筋に意識を向けます。坐骨で床を押すことができたその反動で、背筋が伸び上がっていきます。

禅宗では「青竹が天に向かって伸びるように」とか「富士山のように屹立きつりつして」と表現されています。とはいえしゃちこばるような緊張ではなく、あくまでもすらりとしなやかに立てましよう。

頭頂が天に引っ張られるイメージを持つのもいいかもしれません。あごを軽く引き、肩の力を抜き、お腹を軽く引き締めます。舌先は上の前歯に軽く触れるようにします。

2.上体はリラックスさせる

骨盤を立てて、背筋をすらりと立てたら、あとはリラックスします。リラックスポイントは肩です。肩の力を意識して緩めましょう。

いったん首をすくめるように肩を持ちあげぎゅっと緊張させてから、すとんと肩の力を抜きます。この状態が肩の力が緩んだ状態です。

全身をスキャンするよう足先から頭の上までに観察して、緊張している箇所があったら、意識して緩めていきましょう。

下半身は安定していて上半身は軽やかに伸び上がっている、それが理想です。これが最も身体に負担のかからない、「安定した快適な」坐法と言えます。

【実験3】正しい座り方で呼吸してみましょう

①上体を前後左右に揺らして「坐骨立ち」「骨盤を立てる」をして、背筋を伸ばし、上体はリラックスして、正しい座り方を取ります。いま自分自身ができる最高の座り姿勢でオッケーです。

②この姿勢で「吸って」「吐いて」を数呼吸繰り返します。そのときの息の出入りや身体や心を観察します。また、悪い姿勢での呼吸を思い出し、比較してみましょう。

いかがでしたか? 呼吸の深さが全然異なっていたのではないでしょうか?

呼吸法クイズ

問1:正しい座り方の二つのポイントは「骨盤を立てる」ことともう一つは?

問2:正しい座り方の効果として最も適切なのはどれか?

▢副交感神経を刺激する ▢呼吸が深まる ▢内分泌腺が活性化する

※答えは本記事の最後にあります。

【質問】「正しく座れてもいつの間にか元の(悪い)姿勢に戻ってしまいます」

「どうしたらいいでしょうか?」と生徒さんから質問がありました。

心身には「恒常性」という法則性があります。「恒常性」とは、物事がずっと同じ状態や習慣を保とうとする働きのことです。

つまり正しい坐法を学んでも、身体は元の慣れ親しんだ座り方に戻ろう戻ろうとします。悪い座り方をしてきた身体にとって、正しい座り方は凄く違和感があるのです。

ですから慣らしていく時間を十分に身体に与えてあげるといいですね。いきなり一日の全ての座り時間を「骨盤を立てる」坐法に変えるのはストレスがかかるものですし、土台無理というものです。

一日の中で少しずつ正しい坐法で座る時間を増やしていくのがいいでしょう。例えば座りはじめのときだけは「坐骨立ち」を心がけて、あとは崩れてしまってもオッケー、と許してあげるのもいいでしょう。

あるいは食事の時間だけは正しく座る、でもいいでしょう。みなさんのライフスタイルに合わせて工夫なさってください。

正しい坐法が実は最も安定した快適な姿勢であることが、だんだん身体も身に染みて理解していきます。その段階になると逆に悪い姿勢が不快なものに感じられます。

そうなるとしめたものです。今度は正しい姿勢が身体にとって親しみのあるものになります。つまり正しい姿勢が「恒常性」を獲得したことになります。

また、別の角度からも解説しましょう。骨盤を立てる座り方をしてもすぐに倒れてしまう場合、正しい座り方を維持できないのは、

①体幹の筋肉が弱く、骨盤や脊椎を十分に支えることができていない

②お尻や腿の筋肉が固く骨盤が引っ張られてくずれてしまう

といった原因も考えられます。

しかし、呼吸法やヨーガのポーズを実践することによって体幹の筋肉を鍛えることができますし、ポーズには骨盤周りの柔軟性も高める効果もありますので、合わせて行うことをお勧めします。

いずれにしてもゆっくり時間をかけながら、正しい座り方をご自分のものになさってください。あなたの一生モノの財産となります。

【答え】問1:坐骨立ち 問2:呼吸が深まる

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