はじめに:不思議な現象・ネーザルサイクル(Nasal Cycle)
以前、【零の技法】として鼻呼吸の重要性を探求しましたが、今回はその追加情報として不思議な現象【ネーザルサイクル】とヨーガの呼吸法について深掘りします。未読の方は、まず【零の技法】をご覧いただくと、より深い理解が得られるでしょう。
ネーザルサイクル(Nasal Cycle)とは
なぜ鼻の穴は二つあるのか?
私たちの体には、一対の器官がいくつもあります。例えば目や耳、もちろん鼻も含まれます。
しかし、なぜ鼻の穴が二つあるのか、その真相は科学界でもまだはっきりと分かっていないようです。一説には【ネーザルサイクル】がその鍵であると言われています。
鼻の穴のアンバランスな使用:自然現象
呼吸法を実践すると、左右の鼻の呼吸量がアンバランスであることに気づかされます。これは何かの不調ではなく健康な状態でも発生します。私たちは日常生活の中で無意識に、この不均等さを経験しています。
この現象を自身で確認するには、鼻先に手を当て、空気の流れを感じてみるといいでしょう。左右の一方の鼻は息が通りやすく、もう一方はつまり気味であることが観察できます。
ネーザルサイクルとは
ネーザルサイクルとは、一方の鼻が活動している間、もう一方の鼻が詰まり気味になっている現象のことです。これは自律神経による正常な生理現象で、2~3時間おきに左右がシーソーのように交代していると言われます。
詰まり気味側の鼻の粘膜は、充血し膨張しています。その結果、鼻の穴は極端に狭くなります。
しかし、いつも同じ側だけが詰まっている、もしくは両側の鼻がずっと詰まっている場合は、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔の変形などの可能性もあります。これらの場合は速やかに、医師の診断を受けるようにしてください。
ネーザルサイクルのワケとは
鼻は私達の健康にとって大切な役割を果たします。それは空気のフィルタリング、加湿、および加温の機能を担っており、肺を様々な問題から保護しています。
ネーザルサイクルはこの重要な器官、鼻に休息を与えるメカニズムではないか、左右の鼻で『二交代制』で休息しているのではないかと考えられています。
【実験】ネーザルバランスを観察してみた
鼻先に手鏡(もしくはガラス)を当てて、両鼻から息を吹きかけてみます。すると吐いた息が左右2つの結露となって鏡面を曇らせます。
結露が左右同じ大きさではないことが一目瞭然になります。より大きな、もしくはより長く残る方が、今活動中の鼻となります。
【実験】9.24、9.26、9.27に一時間毎に実施しました。下の表がその結果です。
「右」とあるのは右鼻の方が通っている(つまり現在活動中の鼻である)ことを表しています。「左」とあるのはその反対ですね。
なお、「同」とあるのは、左右の鼻の通りに差がなかったことを示しています。これはちょうどネーザルサイクルの変わり目を示しているのかと思われます。
9.24 | 9.26 | 9.27 | |
4時 | 右 | 右 | |
5 | 右 | 右 | |
6 | 右 | 左 | |
7 | 右 | 右 | 左 |
8 | 右 | 右 | 右 |
9 | 右 | 右 | 右 |
10 | 左 | 同 | 同 |
11 | 左 | 右 | 右 |
12 | 左 | 右 | 左 |
13 | 右 | 左 | 左 |
14 | 右 | 左 | 同 |
15 | 同 | 右 | 右 |
16 | 左 | 右 | 右 |
17 | 左 | 右 | 右 |
18 | 左 | 右 | 同 |
19 | 右 | 右 | 左 |
20 | 右 | 右 | 左 |
21 | 右 | 右 | 右 |
22 | 右 | 右 | 右 |
23 | 左 | 右 |
【考察】9.24と9.27は左右が2~4時間周期で入れ替わっていることが、見て取れます。
興味深いのが9.26です。間に2時間だけ左鼻でしたが、午前8~9時間、午後8時間と一日の大半を主に右鼻中心の呼吸で過ごしています。
体調やテンション、マインドなど、普段と異なるものは何も感じなかったのですが、これは一体どういうわけしょうか?
ただ病的な感じはなく、次の9.27は通常でしたので、これ以上の考察はせずに実験も今回はこれくらいで終了します。
自律神経とネーザルサイクルとヨーガ呼吸法
自律神経の働きによって生じるネーザルサイクル
ネーザルサイクルは自律神経によってコントロールされていることがわかっています。自律神経がが左右交互に働くことから、ネーザルサイクルが発動します。
例えば、右の交感神経の働きが強くなると血管を収縮させ、鼻粘膜は縮小します。つまり、右鼻の通りがよくなり、空気をたくさん取り込めます。
そのとき、左は、左右のバランスをとるように働きます。つまり、左鼻の粘膜は拡張し、左鼻の通りは悪くなります。
この働きは2~3時間おきに逆になります。自律神経が左右交互に働きかけているのです。
左右の鼻の違いとヨーガ呼吸法
現代科学では、右鼻での呼吸は交感神経を、左鼻での呼吸は副交感神経を活性化させることがわかっています。
ヨーガの世界では、左鼻が入り口の「イダー」と呼ばれる月を象徴する気道と、右鼻が入り口の「ピンガラ」と呼ばれる太陽の気道が、陰陽のバランスを司るとされてきました。
現代科学に当てはめると、自律神経の精妙な形がイダーとピンガラだと言えるでしょう。ヨーガの智慧と現代科学の知見が見事に一致する点に、驚かされます。
右鼻呼吸 | 左鼻呼吸 |
交感神経系を刺激する(闘争・逃走反応) | 副交感神経系を刺激する(リラックス効果) |
ピンガラ(太陽の気道)を刺激 | イダー(月の気道)を刺激 |
左脳を刺激する | 右脳を刺激する |
言語能力・論理的思考を高める | 空間能力・想像力を高める |
心拍数、血圧、体温、呼吸数の増加 | 心拍数、血圧、体温、呼吸数の減少 |
アクティブモード | 休息モード |
自律神経にはヨーガ呼吸法でアクセスすることができます。一番のオススメは【参の呼吸法】スカ・プールヴァカ・プラーナーヤーマです。この呼吸法は、左右の鼻孔を交互に使って呼吸することで、交感神経と副交感神経のバランスを取ることができます。これによりネーザルサイクルもより健全に働くことができるでしょう。
まとめ
ネーザルサイクルとは、鼻の穴の詰まりが2~3時間おきに左右交代する正常な生理現象のことです。全容の解明は今後の研究に期待されますが、心身の健康に関わる重要な役割を担っているのでしょう。
ネーザルサイクルの理解と、それに対するヨーガ呼吸法の適用は、私たちの健康と幸福に影響を与えるはずです。この重要な生理的プロセスを正しく理解し、呼吸法に取り組んでいきましょう!
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