はじめに:腹式呼吸は全ての呼吸法の土台
当ブログでは、ヨーガ指導者のわたしが厳選した七つのヨーガ呼吸法を中心にお伝えします。その七つとは以下になります。
これらはヨーガに関わる全ての方にマスターしていただきたい呼吸法です。
しかしその前に、腹式呼吸を見過ごすわけにはいきません。これはヨーガの呼吸法ではありませんが、すべての呼吸法の土台といっても過言ではありません。
理想的な基本のキの呼吸!ゆえに【零の呼吸】として位置づけました。意識的に行う呼吸が「呼吸法」ですので、「腹式呼吸法」と表記するのが本来正しいのですが、ここでは慣例にしたがって「腹式呼吸」と表します。
腹式呼吸はシンプルですが、ここであえて取り上げたのは、あまりにメリットが多すぎるからです。腹式呼吸はあなたに落ち着きとリラックスをもたらし、ストレスを緩和し、内臓を健康にしてくれます。
「呼吸が浅いな」「呼吸法が苦手だな」と思われる方も、腹式呼吸に取り組むことで、あなたの苦手意識はなくなることでしょう。この呼吸法の極意は「しっかり息を吐くこと」、そして「お腹を動かすこと」です。
この腹式呼吸を理解し修得できるように、実践を踏まえながらわかりやすく解説していきます!
とってもシンプル! 腹式呼吸のやり方
まずは、腹式呼吸のやり方からご説明します。正しい坐法を取ってから、
①ゆっくりと息を吐きます: このとき、お腹が小さくなります。
②鼻からゆっくりと息を吸い込む: このときお腹が膨らみます。
①②を繰り返します。
これだけです。簡単でしょう。しかし、やり方は簡単でも奥深いのが腹式呼吸です。これから深掘りしていきますね。
別名は『横隔膜呼吸』。内臓のマッサージ効果とプラーナのこと
別名『横隔膜呼吸』
腹式呼吸と名前がついていますが、実際にはおなかには空気は入りません。おなかが凹んだり膨らんだりすることに連動して、横隔膜が上下して肺をポンプのように動かしています。それゆえ腹式呼吸には横隔膜呼吸という別名があります。
横隔膜のマッサージ効果が凄すぎ
横隔膜は「膜」とありますが、実は筋肉です。焼肉のハラミ肉の部位です。胸部と腹部を隔てる薄い膜状の筋肉ですが、けっして侮れない役割を果たしています。
- 腹式呼吸を司る主力の筋肉として働く
- インナーマッスルの一つとして姿勢を安定させる
- 内臓をマッサージする
突然ですが、ここでクエスチョンです。
Q:横隔膜に接している臓器は何でしょうか?複数あげてください。
腹式呼吸で息を入れたとき、横隔膜が収縮して下に下がります。するとそれに連動してお腹の内臓が押し下げられます。内臓はお腹の前や横に広がります。
息を吐くとき、横隔膜は弛緩して上に上がります。内臓は上に引き上げられます。
一方で肺は肋骨に囲まれていますから、逃げ場はありません。下から横隔膜に押しあげられて、肺は圧縮されて、その結果、息が外に出ていきます。
腹式呼吸を外から見ると、お腹が呼吸に合わせて出たり引っ込んだりして見えます。その内側では内臓がダイナミックに動いています。内臓がマッサージされているのです。それでは答えです。
A:横隔膜の下面は胃、腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓に接しており、上面は心臓と肺に接しています。
たくさんありますね。このように横隔膜は、収縮したり緩んだりすることによって呼吸を司り、さらに重要臓器を直接マッサージしているのです。
プラーナは入ります
一つつけ加えると、「実際にはおなかには空気は入りません」と書きましたが、プラーナ(生命エネルギー)は入ります。
プラーナは意識するところに集まるという習性を持っています。おなかを意識して呼吸することで、腹部の内臓がプラーナに満ちエネルギッシュになるのです。
腹式呼吸に期待される効果
私たち現代人は普段、胸で小さく呼吸することがほどんどです。呼吸力が低下しているのですね。
- パソコンやスマホの普及
- 姿勢の悪さ
- 運動不足
などがその要因です。それだけに腹式呼吸の重要性が浮き彫りになってきます。腹式呼吸は現代人の心身に多くのメリットをもたらしてくれます。以下に挙げてみましょう。
- シンプルゆえに最も取り組みやすいです。腹式呼吸を意識することで日常の忙しさから「いまここ」に戻ることができます。
- 怒りやイライラや不安などを解消し、メンタルが安定し落ち着きます。
- 日常、浅くなりがちな呼吸を深くすることができます。
- 内臓が活性化されて、消化・吸収・排泄が促進されます。
- おなかが引き締まり、姿勢が美しくなります。
- 副交感神経が優位となり、リラクゼーション効果があります。
- 集中力が向上します。
- ストレスが解消されます。
- 免疫システムが強化されます。
素晴らしいですね。現代人が抱えている問題の多くが解消されそうです。それは腹式呼吸さえできれば、何とかなるのではないか、と思わせてくれるくらいです。
呼吸法の極意は「しっかり息を吐くこと」!
「呼吸」という言葉にあるように、呼吸は呼気(吐く息)が先にきます。いつもは無意識で行う呼吸ですが、ここではまず「しっかり息を吐く」ことを意識します。
私たちは普段の呼吸では、一息で500ml程度の息を出しています。ペットボトルの最も一般的なサイズが同じく500mlですね。
しかし、そこからさらに1リットルくらいは吐き出すことが可能なのです。つまりさらにペットボトル二本分はいけるということです。
とにかくまずは肺の中を空っぽにすることです。そうすると自然に新鮮な息が肺の中に入ってきます。これは満員電車に例えることができます。駅のホームにいる人々が電車に乗り込もうとしても、それが満員電車ならば、それはほどんど叶いません。空いている電車が来れば乗車は容易になります。
【プラクティス①】「しっかり息を吐く」ためのオススメの練習法
「しっかり息を吐く」感覚をつかむために、以下の練習法をそれぞれ取り組んでみましょう。
①口を大きく開けてライオンが咆哮するように「ガァ~~~!」と息を吐きます。
②「は!は!は!・・・」と声を出しながら、息が続くまで息を吐きます。
③「は!は!はあ~」と声を出しながら、息が続くまで繰り返します。
④わざと大あくびをしてみます。
それぞれの練習法を数回繰り返します。
ポイント1:息を吐いたと思っても、思った以上に肺の中に息が残っているものです。それをさらに吐き切るように実践しましょう。
【プラクティス②】『口すぼめ呼吸』で息を吐きます
①唇をすぼめ丸めて「フーーーーーッ」と最後まで「しっかり息を吐く」ことをしましょう。おなかをグググと小さく引き締めていきます。
②おなかの力をふっと抜きます。すると自然と息が入ってきます。おなかがポコッと元に戻ります。
①②を数呼吸繰り返します。
ポイント2:息を吐き切った後、ゆるめるだけでも勝手に息が入ってくることを観察しましょう。
2つ目の極意「おなかを動かすこと」!
「しっかり息を吐くこと」の感覚はつかめましたか? 次は「おなかを動かすこと」を意識しましょう。おなかの動きに連動して横隔膜が上下し、深い呼吸が促されます。
【プラクティス③】おなかを動かす
①今度は鼻から息を吐きます。長くしっかりと吐きます。最後におなかをひきしめて息を吐き切ります。
②おなかの力をふっと抜きます。すると自然に息が入ってきます。続いてさらにおなかがふくらむように息をたっぷり入れます。
①②を数呼吸繰り返します。
ポイント3:吐き切った後、おなかをゆるめるだけで自然に息が入ります【第一段階】。さらに意識して息を入れます【第二段階】。つまり二つの段階を踏んで息を入れ、おなかをふくらませます。
【プラクティス④】あお向けで「おなかを動かす」
あお向けで実践すると、「おなかを動かす」ことが感じやすくなります。
①あお向けに寝転んで、胸とおなかに手を置きます。ゆっくりと口から息を吐きます。体の中の空気を全て外に出すつもりで、時間をかけて吐き切りましょう。この時、お腹が徐々に引っ込むように気を付けます。
②鼻からポイント3の二段階で息を吸います。
①②を数呼吸繰り返します。手でおなかが上下に動いているか観察しましょう。
ポイント4:ここは腹式呼吸のレッスンですので、胸を動かす呼吸、いわゆる胸式呼吸になってしまわないようにしましょう。反対の手で胸が動いていないかチェック!
どうしても息を吸うときに胸が膨らんでしまう方は、次のやり方があります。
①息を吐ききります。
②そこで両手で胸の両側から押します。胸を広げる胸式呼吸ができないようにブロックします。
③息を吸います。すると半強制的におなかが膨らみ、腹式呼吸ができるようになります。
松下師恩の体験談
私が勤める介護業界は慢性的な人手不足です。あまりの忙しさに謀殺されそうになるシーンがたびたび生じました。
そのようなときこそわたしは一息入れます。言葉通り一息です。一呼吸だけ腹式呼吸に集中します。口すぼめ呼吸で息を長くしっかりと吐く、お腹をゆるめて息が入る。「いまここ」に戻ります。
そうすることによって私は、何度も何度も心のバランスを取り戻すことができました。バーンアウト(燃え尽き症候群)になる職員が多い中、長年心の平静を保つことができたのは、腹式呼吸のおかげだと思っています。
呼吸法クイズ
クイズ形式であなたの理解を確認しましょう!(答えはこの記事の最後にあります)
問1:腹式呼吸の極意は「おなかを動かすこと」と、もう一つは何か?
問2:腹式呼吸の別名は何か?
まとめ:日常生活に腹式呼吸を溶け込ませましょう
いかがだったでしょうか? 腹式呼吸はシンプルながら効果が豊富で、日常生活に取り入れやすい呼吸です。
その効果はストレス軽減やメンタルの安定、呼吸の深化、内臓の活性化、姿勢改善、リラクゼーション効果、集中力向上、ストレス解消、免疫システム強化などがあります。
まず意識したいのが「しっかり息を吐く」こと、そして「おなかを動かす」こと、でしたね。
日常生活に腹式呼吸が溶け込んでいることが理想です。腹式呼吸で心身の健康とリラックスを実感していきましょう。
【答え】問1:「しっかり息を吐くこと」。問2:横隔膜呼吸
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