生命エネルギー制御の奥義、【バンダ・トラヤ】を徹底解説!

pranayama

はじめに

七つの技法の中でムーラ・バンダウッディーヤーナ・バンダジャーランダラ・バンダの3つのバンダを取り上げました。これら3つのバンダは、ヨーガ呼吸法において必要不可欠な技法であり、クンバカ(息を止める技法)の際に使用されます。

バンダ・トラヤ』とはこれら3つのバンダを同時に用いることを指しています。今回はその詳細な解説を行います。バンダ実践へのモチベーションがより一層高まり、あなたの呼吸法はより進化を遂げることでしょう。

プラーナとは何か?

プラーナとはヨーガの中核をなす概念で、私たちの身体、呼吸、心を制御する生命エネルギーのことです。また、プラーナは宇宙エネルギーそのものであり、熱、光、重力、磁力、電気もすべてプラーナの一形態とされています。インド哲学では、万物はプラーナによって成り立っているとされます。

例えば、二人の人を考えてみましょう。一人はハツラツとした人、もう一人はどんよりした人。ひと目見ただけでも二人の雰囲気がずいぶん違うと私たちは感じます。それは前者はプラーナが満ちていて、後者はプラーナが少ないからだと考えることができます。

さらにプラーナは中国のchi(気)、日本ki(気)の概念にとても似ています。東洋では気が落ちていたり、気が滞ることで病気が発生すると考えられてきました。身体に流れる気(内気)と、宇宙や自然に充満する気(外気)を想定して、呼吸によってその内外を交流、循環させる行法があります。

五大プラーナ

プラーナは一つですが、身体の中に入ったのちは、その働きや場所によって5つの名前で呼ばれるようになります。身体の下から順に、

アパーナ(Apana):(下半身)排泄や生殖を司る下降エネルギー。
サマーナ(Samana):(腹部)消化や吸収を司る。
プラーナ(Prana):(胸部)呼吸を司る。
ウダーナ(Udana):(喉から頭部)声や表現などを司る。
ヴィヤーナ(Vyana):(全身をオーラのように包み込む)循環、全身の運動などを司る。

があります。

プラーナを積極的に取り込む5つの方法

それでは、プラーナに満ちた身体になるにはどうしたら良いのでしょうか? ここではプラーナを積極的に取り込む5つの方法をご紹介します。

1.ヨーガ呼吸法:ヨーガ呼吸法はプラーナを取り込むための重要な手段です。
2.アーサナ:ヨーガのポーズによって、プラーナを身体の中でめぐらせます。
3.瞑想:瞑想中に、身体の中にプラーナを集めるイメージを持つことで、プラーナを増やすことができます。
4.自然に触れる:自然に触れることで、身体にプラーナを取り込むことができます。例えば、森林浴や海水浴などのアウトドア活動、野外でのスポーツやウォーキングなどが挙げられます。
5.食事:食事によっても、プラーナを取り込むことができます。できるだけ加工されていない果物や野菜、穀物、ナッツなど、生命力に満ちた新鮮な食品を積極的に摂ることが大切です。

ぜひ、これらの方法を日常生活に取り入れてください。

プラーナーヤーマとは、ただの呼吸にあらず

結局のところ、身体という解脱げだつのための装置に、いかにプラーナを通すか、いかにプラーナを自在にコントロールするか、それがハタヨーガの命題なのです。

『プラーナーヤーマ(pranayama)』という言葉は、『プラーナ(prana・生命エネルギー)』+『アーヤーマ(ayama・コントロール)』から成り立っています。

すなわちヨーガの呼吸法とは単なる「空気中から酸素を取り入れて二酸化炭素を出す」ガス交換とは異なるわけです。それはあくまで副次的なもので、その本質はプラーナーヤーマ、つまりプラーナのコントロール法なのです。つまり、

1.プラーナを積極的に取り込む
2.プラーナをめぐらせる
3.プラーナを上昇させる
4.プラーナを特定の場所に集める
5.プラーナを通す。ナーディ(気道)のつまりを解消させる

これら5つを実現させる方法です。

例えば、腹式呼吸が健康に非常に良いことを何度か伝えしてきました。『腹式』とはいえ実際のところ、吸った空気はおなかまで下りてきません。おなかに行くのは意識であり、プラーナなのです。

特に丹田呼吸法は下腹部へプラーナ(気)を集中させることを狙っています。プラーナは意識が動いたところに集まる特性があるのです。

バンダ・トラヤを解説!

バンダとは?

バンダとはサンスクリット語で、「蓋をする」「締める」という意味で、プラーナをコントロールするためのヨーガ必須のテクニックです。

バンダがあることによってヨーガ呼吸法の効力が倍増すると言っても過言ではありません。言い換えると、バンダこそがヨーガ呼吸法を特別なものにしているのです。 

バンダには二つの主要な働きがあります。

・プラーナを外に漏らさないこと
・プラーナを特定の方向へ導くこと

そして私たちが修得すべきバンダは3つあります。

1.ムーラ・バンダ(Mula Bandha):肛門を締め上げることによってアパーナ気が下に漏れないようにふたをして、エネルギーを上昇させます。

2.ウッディーヤーナ・バンダ(Uddiyana Bandha):お腹を引き上げることによって内臓の位置を改善し、エネルギーの上昇を促進させます。

3.ジャーランダラ・バンダ(Jalandhara Bandha):のどを締めることによって、エネルギーが上に漏れないように蓋をして、プラーナを充填します。

これらのバンダは、ヨーガのアーサナ(ポーズ)、プラーナヤーマ(呼吸法)、ムドラーなどの実践において使用されます。それぞれのバンダは、プラーナに働きかけ、ヨーガの実践をより深く、効果的なものにします。

3つのバンダを同時に使うとどうなるのか?

バンダはそれぞれ単独でも使用しますが、バンダ・トラヤ、つまり3つのバンダを同時に行うことで、ヨーガ実践者はプラーナの流れを最大限にコントロールすることができます。では、バンダ・トラヤを決めたときに何が起こるのか描写してみます。

まず、【ムーラ・バンダ】をかけることによって、下降する傾向のアパーナ気が逆転し上昇します。それが腹部に至ると、消化の火のエネルギー、サマーナ気を煽り、烈しく燃え上げます。

【ウッディーヤーナ・バンダ】をかけることによって、アパーナ気サマーナ気がさらに上昇し、胸のプラーナ気がこれらに合わさります。

【ジャーランダラ・バンダ】によって上から蓋をされています。圧力鍋の中の食材のように、内部のエネルギーは逃げ場をなくし大変な圧力をかけられます。

その結果、ヨーガ修行者にしか使えない精妙かつ素晴らしいエネルギーが生成されるのです

実践! バンダ・トラヤ

バンダ・トラヤを実践することで、あなたのヨーガの経験はより深く、効果的なものとなるでしょう。以下に二つの主要なプラクティスを紹介します。

プラクティス1:完全呼吸法によるバンダ・トラヤ

正しい坐法を取ってから、

①ゆっくりと息を吐きます。最後におなかを引き締めて息を完全に吐き出します。

②おなかをゆるめ、腹部を膨らませながら息を入れます(腹式呼吸)。

③そのまま胸に息を満たしていきます。肋骨を左右に開き、胸骨を斜め前方に持ち上げます(胸式呼吸)。

④息を止めて(クンバカ)、あごを引き(ジャーランダラ・バンダ)、肛門を締め上げ(ムーラ・バンダ)、おなかを引き上げ(ウッディーヤーナ・バンダ)ます。

⑤十分に息を止めたら、3つのバンダを解いて、ゆっくりと息を吐きます。

これらを3分~10分程度繰り返します。

プラクティス2:バストリカーによるバンダ・トラヤ

正しい坐法を取ってから、

①両鼻で、バストリカーの出入息を20回~25回行ないます。

②最後にしっかり息を吐いてから、ゆっくりと息を吸います。

③息を止めて(クンバカ)、あごを引き(ジャーランダラ・バンダ)、肛門を締め上げ(ムーラ・バンダ)、おなかを引き上げ(ウッディーヤーナ・バンダ)ます。

④十分に息を止めたら、3つのバンダを解いて、ゆっくりと息を吐きます。

これらを3分~10分程度繰り返します。

実践のポイント

ポイントは一つだけ。クンバカの間、3つのバンダが時間の経過とともに緩まないように、最後まで締め続けることです。緩むとそこからプラーナが漏れ出てしまいます。

とはいえ、3箇所を同時に締め続けることが難しいですし、2つのバンダは締まっていても、一つのバンダは緩みがちというケースもあります。

ここで日々の修行が必要になってきます。たゆまず訓練を重ねることで確実にバンダ・トラヤの精度があがっていきます。

まとめ

この記事では、ヨーガにおけるバンダ・トラヤ、すなわちムーラ・バンダウッディーヤーナ・バンダジャーランダラ・バンダの3つのバンダを同時に用いることについて詳しく解説しました。これらのバンダは、ヨーガ呼吸法において重要な役割を果たし、プラーナの流れを制御するために使用されます。

また、プラーナの概念と、五大プラーナについても触れ、プラーナを積極的に取り込む方法を紹介しました。最後に、バンダ・トラヤを実践するための具体的な手順を示し、これらの技法がヨーガの実践をより深く、効果的にすることを強調しました。

全体を通して、プラーナの理解とバンダ・トラヤの実践が、ヨーガ修行者の身体的、精神的な健康と成長にどのように寄与するかが明らかにされています。

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