ブラフマーナンダの生涯(1)ラーマクリシュナの霊性の息子

Ramakrishna world

ラーマクリシュナはあるヴィジョンを見て身震いしました。カーリー女神が彼の膝に子供を置いて、「これはお前の息子である」と言ったのです。

ラーマクリシュナは「何ですって!? 世俗の一切を放棄したわたしに子供が授かるなんて! ありえない!」と狼狽ろうばいしました。

すると母なる神は「その子は肉体の息子ではない。おまえの霊性の息子なのだ」と言い、彼はそれを聞いてホッとしました。

神が約束した霊性の息子が、のちのブラフマーナンダです。彼はヴィヴェーカーナンダと並ぶラーマクリシュナ門下の双璧と仰がれ、ラーマクリシュナ・ミッションの長として組織を発展に導いた聖者です。 

ブラフマーナンダの生い立ち

ブラフマーナンダは、1863年1月21日、カルカッタに近いシクラという村で裕福な家庭に生まれました。母は信仰深い人でクリシュナ神の信者でした。子供はラカール(クリシュナの親友の名前)と名付けられました。母はラカールが5歳のときに亡くなりました。

村の小学校を卒業すると、ラカールはカルカッタの中学校に進学しました。ラカールは運動クラブでナレンドラという少年に出会いました。この少年こそが後のヴィヴェーカーナンダです。

同い年の二人は大の仲良しとなり、ドッキネッショルで兄弟弟子の関係になり、やがては大きな使命を果たすことになります。

ラカール少年の心は、神を悟ることに占められるようになりました。彼は聡明でしたが、学業への興味が失くなりました。彼はただ神への祈りと瞑想に没頭したのです。

父はラカールの将来を心配しました。そこで彼を結婚させることにしました。結婚によって妻への愛着や家族を養う義務が生まれ、もっと世間のことに心が向かうだろうと考えたのです。

しかしこの試みは失敗に終わることになります。なぜなら、この新妻ヴィシュワーシュワリーの家族は、ラーマクリシュナの熱心な信者だったからです。新妻の兄マノモハンはラカールを、ラーマクリシュナに合わせたいと考えました。

聖なるヴィジョン、そして出会い

ラーマクリシュナはカーリー女神に「母よ。わたしは私の永遠の伴侶となる人が欲しいです。心が清らかで、深くあなたに帰依している少年を連れて来てください」と祈っていました。

その数日後、ラーマクリシュナは、カーリー寺院の境内のバンヤン樹の下に立つ、一人の男の子のヴィジョンを見ました。

また別の時に、ラーマクリシュナは、母なる神が同じ男の子を彼の膝の上に乗せ、「これがお前の息子です」と言う冒頭に記載したヴィジョンを見ました。

以来ラーマクリシュナは、霊性の息子の到来を心待ちにしていました。

さらにその数日後、彼は三度目のヴィジョンを見ました。それは、ガンジス河の河面に咲く一輪の美しい千枚花弁の蓮華でした。

その蓮華の上で二人の男の子が踊っていました。そのうちの一人はまぎれもなくクリシュナであり、もう一人は前のヴィジョンで見たのと同じ男の子でした。

二人のダンスはたとえようもなく美しく、一つ一つの動きで美の大海の泡が飛び散るかのようでした。

この聖なるヴィジョンに圧倒され、ラーマクリシュナは恍惚状態に入りました。

まさにそのとき、一艘の船がマノモハンとラカールを乗せてドッキネッショルに到着しました。ラカールを見たラーマクリシュナは驚きました。

これは何ということか!? あの子はバンヤン樹の下に立っていた子だ。母が膝の上に置いて下さった子だ。たった今、蓮華の上で聖クリシュナと踊っていた子だ。これが、わたしが母にお願いをした、心の清らかな伴侶なのだ

ラーマクリシュナは、しばらく無言でラカールを見つめました。そしてラーマクリシュナは、愛を込めてラカールに言葉をかけました。

「名は何というのか?」

「ラカール・チャンドラ・ゴーシュです」

「ラカール」という名を聞くと、ラーマクリシュナは深く感動し、つぶやきました。「ラカール! ヴリンダーヴァン(クリシュナが幼少期を過ごした聖地)の牛飼いの少年――聖クリシュナの遊び仲間だ!」

ラーマクリシュナはラカールの中に、神なる子供を見ました。一方のラカールはラーマクリシュナを見つめていると、自分が神の足元に座る子供のように感じました。

父の妨害を越えて

ラカールは足しげくラーマクリシュナのもとへ通うようになり、時には何日もラーマクリシュナの部屋に泊まりこみました。

ラカールの父は、彼に「ドッキネッショルへ行ってはならぬ」と厳しく命じましたが、まるで効果がないと知ると、父はラカールを家の中に閉じ込めました。数日後、父が仕事で忙しくしている隙を見て、ラカールは家を抜け出し、ラーマクリシュナのもとへと走りました。

ラーマクリシュナは当時のことを次のように回想しています。

「当時のラカールは3、4歳の子供のような性質をしていた。わたしを母親のように見なしていた。走って来てはわたしの膝の上に座ったのだ。そして一歩も動こうとはしなかったのだよ。

「わたしは法悦状態であの子にバターや菓子を食べさせ、母と子のように遊んでやった。よく肩にかついでやった。こんなことをしても、あの子はちっともためらわなかった。

「父親は地主で大金持ちだったが、けちん坊だった。最初はいろいろな手段を使って、息子がここに来ないようにしていたのだよ。

だが本人がここに来てみると、金持ちや有名人が大勢訪れていたので、もう文句は言わなくなったというわけだ。その後、ラカールに会いに時々ここに来るようになった」

コメント