ブラフマーナンダの生涯(5)弟子への指導と神を悟るための教え

Ramakrishna world

歓喜の祭典

ブラフマーナンダの関心は多岐に渡っていました。彼は建物の設計に賢明な指示を与え、救済活動の計画を示しました。教育方法に関する彼の指示は教育家たちに尊重され、書籍編集の守るべき原則についての彼のアドバイスは、このうえなく健全であることがわかりました。

また、公の金銭の出納は厳重に管理されるよう注意を払っていました。さらに、彼が訪れた僧院では花壇を作るように奨励しました。庭園に咲き誇る花々は、神への自然からの捧げものであると彼は見ていたのです。

ラーマクリシュナ・ミッションの事務長サーラダーナンダは、若い僧侶にこう言いました。「わたしが何かを言ったときは、自分でそれが正しいかどうか判断しなさい。しかしマハラジ(ブラフマーナンダ)が何かを言った時には、少しの疑いもなく従って大丈夫だ」

インド全国にラーマクリシュナ・ミッションの僧院と社会福祉施設のネットワークが広がると、ブラフマーナンダはそれらを訪問し、それぞれの場所に数カ月ずつ滞在しました。彼の行くところには常に、祝祭の雰囲気が醸し出されていました。

あるときトゥリヤーナンダは聖典の言葉を引用して、「ハートに主が永遠にましますことを知った人々は、善と美とを与えられ、その生涯は永久の、歓喜の祭典である」とブラフマーナンダのことを称賛しました。

あるとき、地方のセンターのメンバーたちの間に不和が生じ、収拾がつかなくなりました。ブラフマーナンダはそこに乗り込みましたが、彼らには何も尋ねませんでした。

ただ規則的に瞑想することだけを厳命して、ともに静かに暮らし始めました。2、3か月後にブラフマーナンダは去りました。センターには完全な調和が戻っていました。

ラーマヌジャの大慈悲心

最初の頃、ブラフマーナンダは、弟子をとることに対して非常に慎重でした。弟子入りを志願する者がいたとしても、彼は何年もその者をテストした後に、初めて弟子入りを許したのでした。

ホーリーマザー(サーラダー・デーヴィー)はあるとき、ブラフマーナンダが十分な数の弟子をとらないと、不満を述べました。

その直後、偶然、ブラフマーナンダは、ラーマーヌジャ(12世紀の南インドの聖者)の生涯の劇を見ました。その中で次のような場面がありました。

ラーマーヌジャのグルが、弟子として受け入れた彼に神聖なマントラを授けますが、これを誰にも明かしてはならぬ、と警告します。

ラーマーヌジャが「もし明かしたら、どういうことになるのでしょうか?」と尋ねると、師は答えました。「このマントラを聞く者はことごとく無智の束縛から解放されるであろう。しかしお前自身は地獄に落ちる」

これを聞くと、ラーマーヌジャはただちに大勢の人々を集めて、皆に聞こえるようにそのマントラを唱えました。師が怒ったふりをしてラーマーヌジャを叱ると、彼は言いました。

もしわたしの破滅で大勢の人々を解放できるなら、わたしの最高の願いは地獄に落ちることです

これを聞いた師は非常に喜びました。「お前は実に偉大だ! 祝福を与えよう!」

ホーリーマザーからもっと多くの弟子をとるように注意されたことと、その直後にこのラーマーヌジャの物語を見たことは、ブラフマーナンダの心に深い印象を与え、この後、ブラフマーナンダは多くの者を弟子として受け入れるようになったのでした。

イニシエーション

夢の中でブラフマーナンダにイニシエーションを受けた、という少女がやってきました。その信仰深い少女は、夢の中で彼から授けられたマントラを唱えようしました。するとブラフマーナンダが、「お待ちなさい」とそれを押し止め、「それはわたしが言いましょう」と、まさに少女が夢の中で聞いたマントラを唱えたのでした。このような例は、他にもありました。

またあるときは、高貴な二人の婦人の夢の中にラーマクリシュナが現われ、ブラフマーナンダを訪れなさいと告げました。なんと彼女たちはそれまで、ラーマクリシュナのことを全く知らなかったのです。彼女たちは夢のお告げ通りにブラフマーナンダのもとへ行き、彼の弟子になりました。

この出来事に言及して、ブラフマーナンダはこう言いました。「ね! われわれは主とあのお方の教えを説かねばならぬと言う。だが実は、聖ラーマクリシュナご自身が説法をしているのだよ」

女神のような少女

あるとき、一人の少女が僧院にやってきました。両親に結婚を無理強いされて、夫のところから逃げてきたのです。彼女はブラフマーナンダの足元にひれ伏して、こう言いました。

「おお、父よ。わたしは世俗の生活を送りたいとは思いません。ここ僧院であなた様の導きのもとに日々を暮らすことだけが念願でございます。

わたしのたった一つの願いは、神を拝してあのお方を悟ることなのでございます。あのお方だけに、わたしは自分を、身も心も、魂もささげるつもりです

この少女の明らかな熱意とその飾り気のなさに深く感動して、ブラフマーナンダは言いました。

「わが子よ、ここは僧院なのだよ! どうしてあなたを置くことができようか。ご両親のもとにお帰り。心配しておられるに違いない。

彼らのそばにいて、聖典を学び、聖ラーマクリシュナやヴィヴェーカーナンダの教えを読むがよい。あのお方はあなたの心の渇望を知り、あなたの祈りにお答え下さるだろう。

もう少し経ってから、シスター・ニヴェディター(ヴィヴェーカーナンダの西洋人の女性の弟子)の女学校か、またはガウリー・マー(ラーマクリシュナの女性の直弟子)のアシュラムに入ってもよい。

あなたは本当のことを理解している。神を愛するようになるのでなければ、この人生は本当に虚しいものだよ!

しかし少女は両親のもとへ帰ろうとはしませんでした。そこでブラフマーナンダは彼女を祝福して、アシュラムへ送りました。

この少女が去った後、ブラフマーナンダはゆっくりと歩いて書斎に行きました。そこではプレーマーナンダが手紙を書いていました。

彼はプレーマーナンダのそばに座ると、忘我のムードに入りました。周りにいた人々は、ブラフマーナンダの輝かしい表情を見て、彼が感じている神的至福を垣間見ることができました。

やがて通常意識に戻ると、ブラフマーナンダはプレーマーナンダにこう言いました。

「聖ラーマクリシュナのお遊びを、誰が理解することができようか。ヴィヴェーカーナンダは若い女性のために、尼僧院が設立されることを望んでいたが、今わたしには、彼の念願が間もなく実現されることがよくわかるのだ。

われわれの師がお教えになった放棄の理想が、若い女性にも次第に浸透している。今日来たあの少女は、その美しさ、純粋さ、熱意、またその飾り気のなさにおいて、女神のようだった!」

僧侶たちの間に問題が勃発する

僧団が大きくなり、僧侶が増えてくると、さまざまな問題も起こるようになりました。あるとき、二人の若い僧が殴り合いのケンカをしました。

そこでプレーマーナンダはブラフマーナンダのところへやってきて言いました。「マハラジ、われわれ兄弟弟子は長年、平和に仲良く暮らしてきました。

われわれの間では、乱暴な言葉が交わされたことも一度もありませんでした。この二人の若者をどうしたらよろしいでしょうか? 彼らを除名してはいけませんか?」

これにブラフマーナンダが答えました。「兄弟よ。彼らが迷惑なことをやったのは本当だ。しかし彼らが聖ラーマクリシュナの聖なる御足のもとに隠れ家を求めてここに来たのだ、ということも忘れないでください。

彼らは、あなたの助言と指導をあてにしているのだ。あなたは彼らの生活を変え、彼らのハートに愛を芽生えさせるような何かをしてあげることができるのですよ」

「おっしゃる通りです」とプレーマーナンダは答え、さらにこう言いました。

「彼らはここを頼ってきたのです。しかし兄弟よ。彼らを祝福し、その姿を変える人は、あなたです」

ブラフマーナンダは、各地の僧侶たちが仕事と修行をバランスよく行えているかに心を配りました。

心の訓練のない人道支援は人にうぬぼれを生じさせるリスクを、また修行という名において活動せずに怠惰におちいってしまうリスクを、彼は熟知していました。

ある弟子がブラフマーナンダに訴えました。「わたしたちは瞑想の時間が十分に得られないほど、激しく働かなければならないのです」

ブラフマーナンダは答えました。「君は僧だ、仕事がつらいなどと不平を言うべきではない。瞑想の邪魔をするのは仕事の量ではない。気まぐれな心である。

たとえ損をしてもいい、スワミジ(ヴィヴェーカーナンダ)の仕事にこの一生ぐらい捧げてしまえ。君はこれまで無数の人生を生きてきたではないか。

しかし、もし君が彼の仕事に心を込めて自分を捧げきるなら、彼の恩寵によって君の修行はロケットの速さで進歩するだろう

ブラフマーナンダの教え

またブラフマーナンダは僧侶たちを次のように鼓舞しました。

「人生の唯一の目的は、神を知ることである。至福の大海に深く身を沈めて、不死の者となれ。完全なる神の叡智と信仰を獲得し、それから、人類に内在する神に奉仕せよ」

自分の務めは良心的に、しかも執着をせずに行ないたまえ。常に、自分は神の御手の中の道具であるということ、神ご自身が唯一の行為者でいらっしゃるのだということを忘れないようにせよ。

心を神に固定し続けよ。働きながらも神をはっきりと思いつづける、というのは必ずしもたやすいことではない。エゴが入り込むのだ。

しかし、失敗したからとて決して落胆してはならない。最初は繰り返し失敗することは避けられないのだ。ひたすら信仰を持ち続け、努力を倍加せよ。理想に応じた生活をするよう、懸命の努力をし給え。

君たちの座右の銘は、『私は必ず今生で神を悟らなければならない!』というものであれ。結局、この肉体やこの心がもし神を悟ることを助けないのであれば、いったい何の役に立つというのだ。

なせ! 然らずんば死ね! たとえその企ての途中で死んだとて、何の事があろう!」

実践せよ! 実践せよ!霊性の修行を実践することによって、ハートは清められ、新しい世界が開けるのだ。神のみが実在で他のすべては非実在である、ということがわかるだろう。

しかし、ジャパと瞑想によって少しばかり目が開いたときに、目標に達した、などと夢想してはいけない。光だ! もっと大きな光だ! 前進だ! 前進だ! 神に達せよ! 彼のお姿を見よ! 彼に語りかけよ!」

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