ナーグ・マハーシャヤの生涯(8)信者に食事を取らせるために家の棟木を切る

Ramakrishna world

危険を犯してやってきた若者の信者に

ある日のことです。ナーグの信者である若者が、最愛の師に会いたくてたまらなくなり、デオボーグに向かいました。夕刻、彼は列車で最寄りの街ナリアングンジに到着しました。季節は雨期です。土地の全てが水浸しとなっていました。そこからの移動にはボートが必要でした。

空は重い雲で覆われ、夜の闇は深さを増しました。激しい雨が休むことなく降り続いていました。しかも困ったことに、ボートがどこにも見当たりませんでした。そこで若者は広大な水の広がりを泳ぎ渡る決心をしました。

ナーグ・マハーシャヤの祝福を祈り、彼は水に飛び込みました。冷たい水と激しい運動によって、若者の肉体は極度に疲弊していきました。ナーグの家の庭に流れ着いたときには、夜の9時になっていました。ナーグはそこで彼を待っていました。ナーグは叫びました。

「ああ! 君は何ということをしたのだ。何と向こう見ずな子なのだろう! この時期この辺一帯には、毒蛇がうようよしているのだよ。君は、雨が激しく降りしきる嵐の夜に、こんな大胆で軽率な行動を取るべきではなかった」

ナーグの妻は若者に乾いた衣服を与え、彼の性急な行動を叱りました。若者は涙を流しながら、ナーグ・マハーシャヤに会わずに生きるのが辛かった、と語りました。

ナーグの妻は、若者に暖かい料理を出そうとしましたが、火を燃やすための乾燥した燃料がないことに気が付きました。それを知るとナーグは、若者が止めるのを一切無視して、家の棟木むねぎ(三角屋根の一番高いところに取り付ける骨組み)を切り始めました。

彼は妻に言いました。「なあに、わたしに会うために、毒蛇がうようよいる水の中を、大事な命の危険も顧みずに泳いできた人のためなら、こんなわずかな犠牲など何でもない。わたしはわずかでも人々に奉仕できるなら、自分の命を捧げることさえも、格別な幸運と思う」

自殺から若者を救う

また別の時、この同じ若者はカルカッタに住んでいました。彼は苦悩の日々を送っていました。彼の心はまだ叡智の光に照らされてなく、最愛の師ナーグ・マハーシャヤとの別離の日々は、彼の心を重く苦しくしていました。

若者は思いつめてこう考えました。「たとえわたしがナーグ・マハーシャヤのような偉大なる魂の恩寵を得たとしても、その至福を実感できないなら、わたしの一生は何になろう」

彼は絶望のあまり、テラスから飛び降りて命を断とうと決心しました。そして実行しようとしたその瞬間、

「あなたは明朝、ナーグ・マハーシャヤに会うであろう」

という声がしました。若者は驚き、震えました。なぜならそこには誰もいなかったからです。彼は部屋に戻り、ベッドに横になりました。

 

翌朝、自分を呼んでいる声に気づき目覚めました。ドアを開けると、そこには何とナーグが立っていました。ナーグは言いました。

「なぜ君は、あのようなぞっとする考えを抱くのですか? 君のことが心配で心配で、わたしは君のためにここに来ました。ラーマクリシュナの世界に入った者が、何を煩う必要がありましょう? 焦ってはいけません。自殺は非常に憎むべき罪なのです」

ナーグはさらに続けました。「この間までは、君は浅い小川を漂っていました。しかし今、君は深い海に入ったのです」

ナーグは、ベルル僧院に若者を連れていき、ラーマクリシュナの出家した弟子たちに彼を合わせて、言いました。「この若者は非常に落ち着きがありません。どうか彼にあなた方の祝福を惜しみなく与え、彼がグルの恩寵を得ることができるように手助けしてください」

ナーグの妻の献身

ナーグ・マハーシャヤの妻シャラトカーミニーは、彼の第一の信者でもありました。彼女は毎朝誰よりも早く起き、朝の家事を終えるとすぐに礼拝と瞑想に坐りました。彼女は、夫と信仰者が食事を終えるまでは、食事を取りませんでした。彼女は全ての家事を、誰にも手伝わせず一人で行ないました。

シャラトカーミニーは信仰と慈愛そのものであり、女性としての美徳をそなえていました。他者への奉仕における彼女の優しさと辛抱強さ、自己犠牲と、一切を超えた彼女の純粋さや苦行は、誰の心をもとらえずにはいられませんでした。

彼女にとって、夫だけが神でした。ナーグ・マハーシャヤこそが彼女の唯一の礼拝の対象であり、彼に対して心からの信仰と崇拝をささげました。

ある祝福された日に、シャラトカーミニーはナーグ・マハーシャヤの足もとに花を捧げたいと思いました。しかしナーグはそれを許しませんでした。全ての衆生を神と見ているナーグは言いました。

「私が礼拝しているその人から、どうして供物を受け取ることなどできようか?」

彼女はあきらめずにチャンスをうかがいました。ナーグが何気なく、部屋の隅に立っているときに、彼女は素早く彼の足もとに花を捧げ、その花を金のロケットに入れて首にかけたのでした。

ナーグの義理の母の礼拝

ナーグ・マハーシャヤの義理の母も、非常に信心深い女性でした。あるとき彼女はコルカタに上京しました。そこで彼女は毎日ガンガーで沐浴し、川底の泥でシヴァの像を造り、礼拝しました。

ある日、彼女が礼拝していると、シヴァの像の頭部に、ひび割れがあるのを発見しました。これは不吉な前兆であると彼女は身震いしました。ひどく心がかき乱され、ガンガーの岸辺で一日中涙にくれていました。

暗くなっても彼女が戻らないので、ナーグは探しに出かけ、ガンガーの岸辺で泣いている彼女を見つけました。ナーグは彼女に、「何も悪いことは起きないでしょう」と慰めました。

しかし彼女は家に帰ってからも、食事を取らず、悲しくみじめな気持ちのまま床に就きました。その夜、彼女は、シヴァ神が現われ、次のように語る夢を見ました。

「わたしはあなたに非常に満足している。あなたはもうわたしを礼拝する必要はない」

翌朝、彼女はその夢を義理の息子ナーグに話しました。その日を境に、彼女の神像への礼拝は終わりを告げました。誰かが彼女にその理由を尋ねると、彼女はこう答えました。

「わたしはシヴァを義理の息子として手に入れました。この上、シヴァの像を礼拝する必要がありましょうか」

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