ブラフマーナンダの生涯(終)クリシュナの永遠の友

Ramakrishna world

クリシュナの永遠の友

ラーマクリシュナはラカールとの出会いの直前に、この少年が神秘的な蓮華の上で、クリシュナと一緒に踊っているヴィジョンを見ました。しかし彼はこのことは秘密にして、ごくわずかの直弟子しか明かしませんでした。

ラーマクリシュナは、「もしラカールが自分の真の性質、つまりクリシュナの永遠の友であることを知ったならば、彼は肉体を去るであろう」と言いました。

1922年の3月、ラムラル(ラーマクリシュナの甥)が、ブラフマーナンダを訪ねてきました。ラムラルは、ラーマクリシュナの侍者として、ブラフマーナンダとともに献身的に師に仕えていました。

そのため二人が会うとおのずからラーマクリシュナとの思い出話が始まり、そして互いにからかっては一緒に笑うのでした。

ブラフマーナンダはラムラルに、ラーマクリシュナのためによく歌った歌をリクエストしました。そこにいた大勢の弟子や信者たちも、同席して聴くことになりました。

ラムラルは、クリシュナとヴリンダーヴァンの牛飼いたちの歌を歌い始めました。ラムラルが牛飼いの乙女たちの身振りを真似るので、ブラフマーナンダもみんなも大笑いしました。

しかしラムラルが「帰ってきて、おお、クリシュナ。ヴリンダーヴァンに帰ってきて。そして牛飼いたちのハートに君臨してください。あなたも牛飼いだということを、忘れてはいけません」

という一節を歌った瞬間、ブラフマーナンダが突然厳粛になりました。彼はこの世界を超えた領域に運ばれてしまったように見えました。みんなの笑いも戯れも止まり、空気はせきとして静まりました。

ブラフマーナンダが自分の本性を垣間見て、自分がクリシュナの永遠の友であることを知ったのは、このときだったといわれています。

その数日後、ブラフマーナンダは夜中に突然目を覚まして、ラーマクリシュナのヴィジョンを見ました。師はしばらくブラフマーナンダの前に立ち、何も言わずに消えました。

ブラフマーナンダはこう述べました。「わたしはもう、この世について考えることはできない。わたしの心はあのお方の中で、あのお方だけの中で、完全な休息を取ることを欲しているのだ」

ブラフマーナンダ最期の日

それからまもなくして、ブラフマーナンダはコレラにかかりましたが、一週間も経たぬうちに回復しました。しかし病後の衰弱に糖尿病が加わり、容態が悪化しました。

一人の信者が体の具合を尋ねるとブラフマーナンダは答えました。「この状態にあっては、わたしはすべての肉体的苦痛に忍耐強く、不足を言わずに耐えなければならないのだ、ということを、どうぞわかってください」

しかしそう言いながら、ブラフマーナンダの顔は神々しく光り輝き、苦痛は溶け去ったように見え、ブラフマーナンダは外的意識を失って瞑想に没入しました。

その夜の9時頃、弟子の上に手を置き、「嘆くな。君はよく仕えてくれた。君は神に合一し、ブラフマンの悟りに到達するよ。それができるように、わたしが祝福してあげる」と言いました。

それから、弟子や信者たちを枕元に呼び、一人一人に祝福を与えました。そしてブラフマーナンダは、みなに向かってやさしく言いました。

ああ、わたしの子供たちよ。決して神を忘れてはいけない。そうすれば最高の善を悟るであろう。悲しんではいけない。わたしは常に君たちのそばにいる

もはや超越世界を隠すことなく

そう言うと、ブラフマーナンダは再び超越的意識に没入しました。そしてしばらく経ってから、美しい声でこう言いました。「わたしは浮かんでいる。バクティ(信愛)とジュニャーナ(叡智)の葉に乗って、ブラフマンの大海に浮かんでいる」

そして突然、叫びました。「ああ! 聖ラーマクリシュナの御足だ! わかっている! ヴィヴェーカ、兄弟ヴィヴェーカーナンダ! プレマーナンダ! ヨーガーナンダ!・・・・・・」ブラフマーナンダは、すでに他界していた師や兄弟弟子たちのヴィジョンを見ていたのでした。

ブラフマーナンダは、常に超越世界に生きている人でしたが、生前はその事実をほとんど人に漏らすことはありませんでした。しかし今はもう、その事実を隠そうとせず、自分が見ている様々なヴィジョンを語り続けました。

「ああ、至福に満ちたブラフマンの海! オーム、至高のブラフマンに帰依し奉る! オーム、至高の真我に帰依し奉る!」

神聖な経験を語り続けるうちに彼ののどが乾いてきました。そこで弟子がレモン水を持ってきました。

ブラフマーナンダは「心がブラフマンから下がりたがらないのだよ。ブラフマンをブラフマンの中に注ぎ込んでおくれ」と言いながら、子供のように口を開けて、水を流し込んでもらいました。

それから兄弟弟子のサーラダーナンダに向かって言いました。「兄弟よ。聖ラーマクリシュナは真実だ。あのお方の神の化身は真実だ

この後、ブラフマーナンダはしばらく沈黙しました。彼は瞑想に没入し、その顔はこの上なく甘美な表情をしていました。

そこに居合わせた人々の心は非常に高められ、彼らは悲しみではなく、ただ喜びと静けさだけを感じました。

すると突然、沈黙の中から、ブラフマーナンダの声が聞こえました。

ああ、あのたとえようもない光! ラーマクリシュナ、わたしのラーマクリシュナのクリシュナ・・・・・・わたしは牛飼いだ。足に足輪をつけてくれ。わたしのクリシュナと一緒に踊りたいのだ。彼の手を取りたいのだ!

ゴーパーラ・クリシュナ・・・・・・ああ、クリシュナ、わたしのクリシュナ、来ましたね! クリシュナ・・・・・・クリシュナ・・・・・・君たちに彼が見えないのか。君たち、見る目を持たないのか。おお、なんと美しい! わたしのクリシュナ・・・・・・蓮華の上に・・・・・・永遠の・・・・・・甘美なる者よ!

わたしのリーラー(遊戯)はもう終わったのだ。見よ! ゴーパーラ・クリシュナがわたしをなでている。一緒に行こうとわたしを呼んでいる! わたしは行く・・・・・・

その部屋全体の空気が、彼の言葉からあふれる優しさと神々しい慈悲心に満ちあふれ、感動しているようでした。

君は神の子を見たのだ

その三日後、1922年4月10日の夜、ブラフマーナンダの胸が突然、大きくふくらみました。まるで、身体の中を大きなエネルギーの波が上まで昇ってきたかのようでした。

半ば閉じられていた目は見開かれ、ブラフマーナンダは遠くを見つめました。その目はたとえようもない美しさに光り輝いていました。ブラフマーナンダは肉体を去ったのでした。

ブラフマーナンダの他界の後、彼の弟子たちは、ブラフマーナンダが自分の中にいることを強烈に感じました。肉体という障害が除かれ、彼が生きていた頃よりも、いっそう近く感じたのです。

そのため、ブラフマーナンダの弟子たちは、なお彼が生きて自分を守り導いてくださることを疑いませんでした。

兄弟弟子シヴァ―ナンダは、これからインドを離れアメリカでの任務に向かうブラフマーナンダの弟子に対してこう言いました。

君は決して自分が神の子を見たのだ、ということを忘れてはいけない。君は神を見たのだ

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