【約束された弟子】ヨーガーナンダの生涯(1)家族の計略に翻弄されながらも、神の悟りを求める

Ramakrishna world

ラーマクリシュナは12年にわたる激しい修行の時期を経て、完全なる悟りの境地に至りました。それからの彼は、修行の果実を分かち合う弟子の到来を、待ち焦がれました。多くの弟子たちは彼の最後の5年間に集結しましたが、それよりも早く師にまみえる幸運を得たのが、ヨーガーナンダでした。

カーリー女神はラーマクリシュナに、約束された弟子たちの姿をヴィジョンで見せていました。ヨーガーナンダを一目見るや、彼が約束された弟子の一人であることを確信したのです。

ちなみにMことマヘンドラナート・グプタとも交流があった『あるヨギの自叙伝』で有名なヨガナンダとは別人です。

ヨーガーナンダは出家した弟子たちのなかで一番早く世を去りました。その短い人生の中で彼はラーマクリシュナ、ホーリーマザー、ヴィヴェーカーナンダを支え、引き立てる重要な役割を担っています。

生い立ちとラーマクリシュナとの出会い

ヨーギンドラ・ナート・ロイ・チョードリー(後のヨーガーナンダ)は、1861年、名門チョードリー家に生まれました。父のナヴィン・チャンドラはかつて裕福な地主で、先祖代々ドッキネッショルに住んでいました。

ヨーギンが生まれる前から彼の子供時代にかけて、祭儀やキールタン、叙事詩『マハーバーラタ』や、『バーガヴァタ』の朗唱が、チョードリー家に鳴り響いていました。ラーマクリシュナはその祭礼に参加するために、ヨーギンの家を何度も訪問していたのです。

ヨーギンは物静かな少年でした。生まれつき高貴な性質で子供のころから自己認識に長けていました。友達と遊んでいる時でさえ、突然もの憂げに空を見上げるのでした。

自分はこの世のものではなく、ここが自分の本当の住処ではないと常に思っていました。自分の本当の住処は遥か星のかなたにあって、本当の仲間はまだそこにいるのだと感じていました。

16,17歳になったヨーギンはドッキネッショルのカーリー寺院の美しい庭園をよく訪れていました。彼の家は寺院の近所にあったのです。あるときヨーギンが庭園を散策していると、一人の男が通りかかりました。ヨーギンは彼を庭師だと思い、花を一本摘んでほしいと頼みました。男は願いを叶えてあげました。

別の日に、カーリー寺院の一室にたくさんの人が集まり、説法を聞いているのをヨーギンは見ました。説法をしていたのは何と彼が庭師だと思った男でした。その男こそがラーマクリシュナだったのです。

ヨーギンは部屋に近づきましたが、中に入れずにいました。そのときラーマクリシュナは信者の一人に、外にいる人全員を中に入れるように頼みました。信者が外に出てみると、少年が一人いるだけでした。信者は彼を連れて中に入りました。

説法が終わると、ラーマクリシュナは少年のそばに来て、優しく彼のことを尋ねました。少年が旧知のナビンの息子だと知って喜びました。さらにヨーギンが彼の弟子となる6人のイーシュワラ・コーティー(最上級の魂)の一人であることも、母なる神が示していました。

チョードリー家は裕福な地主でしたが、ヨーギンが大きくなると家族間のいざこざで大半の財を失いました。しかし先祖代々の家がドッキネッショルにあったことから、ヨーギンは非常に若くして師に巡り会う幸運を得ました。後に出家することになるラーマクリシュナの弟子たちの中で、彼が最も早く参じたのです。

ヨーガーナンダ(1861-1899)

ヨーギン、家族の計略にかかる

師との出会いによって、ヨーギンの「神の悟り」への渇仰は燃え上り、一日のほとんどを修行と瞑想に費やすようになりました。彼はもはや勉強を続けることに意味なしと判断し、世俗的な野心も消え失せました。

チョードリー家の人々はヨーギンをとても心配しました。なぜならドッキネッショルにおいてラーマクリシュナは、『狂ったブラーフミン』として知られていたからです。 

ラーマクリシュナは発狂し、裸で歩き回りながら神の御名を叫んでいる、と噂されていました。彼の影響を受けて、ヨーギンも気が狂い、世を捨ててしまうのではと心配したのでした。

そこで彼らは一計を案じました。当時、実家を離れて叔父の家に暮らしていたヨーギンに、実家の誰かが病気で倒れたという知らせが届きました。

心優しいヨーギンは、もしかしたら病気になったのは母ではないかと思い、実家に急行しました。しかしそれは、ヨーギンを結婚させるための策略だったのです。

ヨーギンの切なる願いは、世俗を放棄して、一生独身の生活を送り、全てのエネルギーを「神の悟り」に捧げることでした。しかし心優しい彼は、母の涙ながらの懇願に逆らえませんでした。両親に結婚をごり押しされ、心ならずも承諾してしまいました。

結婚生活のきずなでヨーギンを世俗につなぎとめようと、両親はもくろんでいました。そのヨーギンは、もはや自分の人生は終わったと感じました。師の第一の教えは「愛欲と金」の放棄なのだから、神の悟りの望みは破綻したと思いました。

師ラーマクリシュナはヨーギンを可愛がり、修行者としての彼の未来に大きな期待をかけていました。ヨーギンの結婚を知ったら、師はさぞ失望するだろうと彼は考えました。そのため彼は、師の前に顔を見せることもできなくなりました。

師ラーマクリシュナは繰り返し何度も、自分に会いに来るようにとヨーギンに伝言を送りました。しかしヨーギンはそれを拒み続けていました。

ヨーギン、ラーマクリシュナの計略にかかる

そんなあるとき、ラーマクリシュナはヨーギンの友人に、「ヨーギンは以前カーリー寺院の職員から受け取ったお金を返していない」と言いました。それを伝え聞いたヨーギンは、ショックを受けました。

確かに以前、職員に買い物を頼まれていて、そのわずかなおつりが手元に残っていました。それを返せなかったのは、結婚をして寺院から足が遠のいたからであり、しかも非常にわずかな額でした。

「師はわたしを詐欺師だと思っている!」ショックを受けたヨーギンはおつりを返すために、その日のうちにカーリー寺院を訪れることにしました。これが師への最後の訪問になるだろうと思いながら。

ヨーギンが部屋に入ってくるやいなや、ラーマクリシュナは腰布を小脇に抱えて子供のように駆け寄りました。師は法悦状態で彼の手を握りしめ、こう言いました。

結婚したからって、それが何だ。わたしだって結婚しているじゃないか。何を恐れることがあろうか。(自分自身を指して)これの恩寵があれば、たとえ十万回結婚しても、害を受けることはない。

家住者としての人生を送りたいなら、ここに奥さんを連れておいで。お前の霊性の伴侶になるようにしてあげよう。だが出家修行者として生きることを望むなら、お前の世俗への執着を食い尽くしてあげよう

師の言葉で、ヨーギンの心の重荷が取り除かれました。彼は涙ながらに師に額づきました。彼のハートに現世放棄と神の悟りへの渇仰がよみがえりました。

部屋を去る前に、ヨーギンはここへ来た目的である、おつりの話を持ち出しました。ラーマクリシュナはそれには全く無関心でした。師がおつりの話を友人にしたのは、自分をここに来させるための口実に過ぎなかったのです。

ヨーギンの師への愛と敬信はより一層強まりました。彼は以前にも増してラーマクリシュナを訪問するようになりました。そして結婚しても、家住者の義務と金を稼ぐことに無関心でいました。

ある日彼の母は、ヨーギンに尋ねました。「お金を稼ぐのが嫌なら、どうして結婚したの?」

ヨーギンはこう答えました。「結婚する気がなかったことは、何度も何度もお話ししたではありませんか。でも、お母さんの涙に負けたのです」

すると母は怒りだして、言い返しました。「なんてことを言うのです。お前がしたくないなら、どうして結婚できたのかしら?」

この言葉にヨーギンはショックを受け、唖然としてこう思いました。「おお主よ。母を喜ばせるためにあなたを見捨てようとしたのに、今になって母はこんなことを言っています。もうたくさんです!」

この日からヨーギンは完全に世を厭うようになり、師ラーマクリシュナのもとに泊まり込むようになったのです。

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