ラーマクリシュナの在家信者の中で、三傑と呼ばれる弟子がいます。ギリシュ・チャンドラ・ゴーシュ、Mことマヘンドラナート・グプタ、そして、今回の主人公であるナーグ・マハーシャヤです。
ヴィヴェーカーナンダはことあるごとにナーグを称賛していました。「わたしは、地球上の様々な国を広く旅したが、ナーグ・マハーシャヤほどの偉大な人物に出会えたことはなかった」
ナーグ・マハーシャヤのやることなすことの全てが、わたしたちの固定された概念をことごとく越えていきます。その度にわたしたちの心はゆり動かされるでしょう。その驚嘆すべき生涯をぜひ最後までご覧ください。
ナーグの生い立ち
ナーグ・マハーシャヤという呼び名で知られるドゥルガーチャラン・ナーグは、1846年、東ベンガル州(現バングラデシュ)の小村デオボーグに生まれました。ナーグの兄弟は妹一人以外はみな幼くして病死しました。母もナーグが8歳の時に他界し、叔母が育ての親になりました。
ナーグは強く健康な肉体を持ち、長い髪は優雅に垂れて、非常に美しかったといいます。静かな少年は、夜空にきらめく星々を見つめて長い時を過ごしました。「愛しいお母さん」少年は叔母に言いました。「星たちの世界に行きましょう。僕はここでは気分が良くないのです」
叔母はいつも『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』から、魅力的な物語を聞かせて彼を寝付かせました。彼は物語の神々の姿を、そのまま夢に見ました。
勉学と妻の死と宗教と
ナーグには勉学への情熱がありました。他に適切な中学校がなかったために、ダッカまで往復36キロを歩いて通学しました。雨、強烈な日差し、寒さが彼を襲いましたが、全期間を通じて彼が休んだのは二日間だけでした。
その当時の伝統にのっとり、ナーグは若くして結婚しました。その後、彼はカルカッタでホメオパシー(同種医療)の勉強と研究に没頭しました。彼が妻と顔を合わせる機会はなく、帰省時に顔を合わせたときも妻に誘惑されないように、ナーグは一晩中木の上で過ごしました。
この若い妻は赤痢を患って亡くなりました。妻の死去は、深くナーグの心を動かしました。同時に安堵しました。神が自分を世俗的な束縛から救ってくれた、と感じたからです。
彼は近隣の貧しい人々に治療を始め、無償で薬を処方しました。彼の治療の成果は素晴らしく、その評判は広がり、数多くの患者が集まりました。彼がもし望めば大金を稼ぐことができたでしょう。しかしそうはしませんでした。彼の理想は、ただ病人や貧しい人々に仕えることにあったのです。
この頃ナーグは、生涯の友となるスレシュと出会いました。彼らは会うたびに宗教的な理想について語り合いました。ナーグは次第に医学への興味を失い、宗教の勉強をはじめました。
彼は毎日ガンガーで沐浴をし、定期的な断食の儀式を遵守しました。毎日、黄昏時になると火葬場に赴き、一人で瞑想に没頭しました。ナーグは何時間もそこに座り、思索しました。
「むなしい、むなしい、すべてがむなしい。神だけが真実である。神を見出すことができなければ、人生は真に重荷である。いかにしてわたしは神を実現すべきであろうか? 誰がわたしに、その道を示してくれるのだろうか?」
再婚話
ナーグの行動は父ディンダヤルの知るところとなりました。父はナーグの新しい花嫁探しを急ぐことにしました。ナーグが火葬場で修行者と一緒にさまよっているのは、彼を現世に縛り付ける絆がないからで、結婚すればあんな馬鹿げた行動はしなくなるだろう、と考えたのです。
しかしナーグは再婚を断固拒否しました。「あなたは一度わたしを結婚させました。しかし、その少女は亡くなりました。あなたはまた、誰かの娘を死の淵に置くのですか!」
父も負けじと答えました。「もしお前が父親に背いたら、お前は人生の目的を果たせなくなるだろう。わたしはお前が、宗教的な生活においても進歩しないように呪うだろう!」
ナーグは苦悶しました。結婚を拒めば父の呪いにあい、結婚すれば神を実現できなくなります。ナーグは父に懇願しました。
「わたしたち男性のすべての悲しみと苦しみの原因は、結婚にあります。どうぞ慈悲をもって、あなたの決意を変えてください。どうかわたしを再び奴隷の身分にしないでください。
あなたが生きている限り、わたしはあなたに真心と魂をこめて仕えましょう。わたしはあなたの義理の娘になる人よりも、いっそう献身的に、何百回となくあなたに仕えましょう。どうかお救いください」
ナーグの痛ましい顔つきと懇願に、父は深く心を動かされました。父は、息子の幸せを願って縁談を進めましたが、それで息子が不幸せになるのなら意味はない、と縁談を取りやめました。
父の涙
息子が結婚しなければ家系は途絶えてしまうという事実は、父ディンヤダルに衝撃的な苦しみを与えました。彼は悲しみに押しつぶされ、ひそかに涙しました。
ナーグが帰宅すると、父が泣いているのを目にしました。その姿はナーグの心を骨の髄まで揺さぶりました。「父が結婚によって慰めを得るなら、わたしはそれをしなければならない」ナーグは父親の手をとり、結婚を承諾したのでした。
父は大喜びし、縁談が進められました。全ての人が喜んでいました。しかしナーグは一人苦しみにあえいでいました。ナーグは、一日中外を歩き回り、一晩中ガンジス河の岸辺に座り、ひどく泣きました。誰も彼の心情を理解できる者はいませんでした。
ナーグは聖なるガンガーに頭を下げて言いました。
「おお、母なる神よ! わたしは汝がすべての罪を清める者だと耳にしました。おお、母よ! もし私が家住者となって世間のゴミや埃にまみれても、それらを洗い流したまえ。そして幸、不幸いずれのときにも、汝の神聖な御足の下にわたしの避難所を与えたまえ!」
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